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箱庭療法学モノグラフ第17巻

心理療法における象徴機能の回復

イメージの展開からみる臨床的アプローチの可能性


片山 知子 著

単行本 ¥3,960

刊行年月日:2022/10/12
ISBN:978-4-422-11751-5
定価:3,960円(税込)
判型:A5判 210mm × 148mm
造本:並製
頁数:244頁

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内容紹介

象徴機能の回復のプロセスと心理療法の役割

象徴機能は、ことばによるシンボル、行動によるシンボル、無意識をあらわすシンボルなど、広域である。本書では、出来事に対する感覚や感情を体験として意識化して自分を表現・調整し、人の中で生きてゆくために必要な機能として捉え、医療や福祉施設での事例を中心に、象徴機能が不全、あるいは未獲得な状態にあるクライエントの象徴機能の回復過程を検討、イメージの心理療法における新たな臨床的アプローチの可能性を探究する。
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目次

はじめに──象徴以前から始まる心理療法

第Ⅰ部 象徴機能からみる解離の研究

第1章 解離研究の変遷
 1.神経症の解離と抑圧──神経症の機序
 2.戦争神経症から診断基準へ──症状としての解離
 3.心的外傷者の中核症状としての解離──複雑型PTSDへの注目

第2章 心的外傷を抱える被虐待児の象徴機能
 1.被虐待児における象徴機能の諸特徴
  (1)子どもという観点の成立と児童虐待
  (2)被虐待児にみられる症状・情緒・行動
  (3)愛着対象とスキーマの内在化
  (4)被虐待児における象徴機能とからだの関係
  (5)入所施設における被虐待児との心理療法
 2.解離への新たなアプローチ──象徴機能の回復過程を再検討する意味

第Ⅱ部 心理療法へのアプローチ

第3章 はなしことばにおける象徴以前/以降
 1.ことばのはじまり──感覚運動期・喃語・初語
 2.情緒の共有──共同注視にみる移行対象の成立
 3.ことばの持つちから──その象徴以前/象徴以降
  (1)表象からシンボルへ
  (2)自己の獲得とことば
  (3)心理療法におけるはなしことば

第4章 箱庭療法における象徴機能の多様な側面へのアプローチ
 1.あそびと箱庭療法
 2.箱庭療法における象徴表現
 3.統合失調症者の箱庭療法研究からみる諸要素
  (1)構造と体験
  (2)イメージと思考
  (3)箱庭療法における砂の働き
 4.統合失調症を抱えるクライエントとの心理療法の実際──その内的な守りについて
 5.象徴以前から始まる心理療法への観点

第Ⅲ部 心理療法の実際──その象徴機能の回復をめぐって

第5章 はなしことばの獲得と自他の分化──虐待と発達の問題を抱えた幼児Aとの遊戯法を介して
 1.遊戯療法にみられたはなしことばの獲得
 2.自閉的なあそびから相互性へ
 3.遊戯療法にみられた自他の区別とことばの発生
 4.ことばの獲得以降──象徴化機能の定着から自意識のめばえへ
  (1)個人空間の確立から開かれた空間へ
  (2)取り込みと小麦粉あそび──象徴機能を補うあそび
  (3)こころの構造と時間の意識化
  (4)自意識の高まり
 5.象徴以前から象徴機能の獲得以降へ──ことばの獲得とイメージの生成

第6章 他者との出会いと幻想からの三度の分離──愛着の問題を抱えた学童期の男子クライエントBとの遊戯療法
 1.愛着の問題を抱えること
 2.セラピストへの問いからのはじまり
 3.幻想からの最初の分離による僕の誕生
 4.長い物語から心理療法のおわりまで──象徴的な死の体験による分離
 5.虐待体験の幻想からの三度の分離による主体性の変化

第7章 象徴以前のイメージから夢の体験とスタックの解消──身体的な虐待を抱えた思春期の男子クライエントCとの面接
 1.身体とこころ
 2.生と死の葛藤
 3.思い出の語りにおける感覚と感情の統合
 4.夢による死の体験とスタックの解消
 5.象徴機能を回復させたいくつかの境界

第8章 女性性との交流による個性化の過程と自我境界の獲得──頭部の外傷を抱えた女性クライエントDとの箱庭療法
 1.症状へのアプローチからイメージ表現へ
 2.男性との関係/女性との関係
 3.夢の語りからのはじまり
 4.中心の獲得から人格化へ
 5.見られることから見守られることへの体験の変化
 6.祭りを通した地の神との出会い
 7.空間の内在化と箱庭療法の終了の関係
 8.心理療法の終了──子どもから女性の大人へ
 9.意味から生起した内的な境界の生成と象徴機能の回復──融合した状態からの分離とことばの統合

第9章 日常の居場所におさまるまでのこころの作業──統合失調症を抱えた成人男性Eとの心理療法の過程
 1.体験が自我を凌駕したとき──発症体験
 2.感覚と体験のつながりからイメージの生成へ
 3.箱庭における中心の構築──こころの動きの共有
 4.空間の内在化と居場所を見いだすこと
 5.おわりのないイメージとの関わり
 6.統合失調症における境界の働きと象徴機能──こころの作業とあそび
  (1)入院施設における構造の働き
  (2)逆転移の働き
  (3)対話の基盤としての箱庭療法
  (4)箱庭療法における境界の確立と幻想から日常への橋渡し
  (5)統合失調症を抱えるクライエントの象徴機能の回復と境界の働き
  (6)遊戯療法はあそびなのか──生活の中のあそびを楽しむまで

第10章 考察と結論──心理療法における象徴機能の回復
 1.象徴以前における心理療法の役割
  (1)事例における象徴機能の異同
  (2)逆転移の心理療法的な意味
  (3)限界設定とクライエントの象徴機能の関係
  (4)媒介の選択と象徴機能の関係
  (5)アセスメントと情動の調律
 2.象徴機能以降の心理療法──内的な体験の共有
  (1)境界の賦活──身体感覚からかことばからか
  (2)内的な作業の共有──心理療法における共同注視
  (3)象徴以前から始まる心理療法のあそびの質をめぐる検討
  (4)心理療法の終了へ──象徴機能の回復の異同
 3.象徴以前から始まる心理療法──そのまとめと結論



引用文献
人名索引
事項索引
初出一覧
おわりに──日常性の回復
謝辞

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著者紹介

[著]片山 知子(カタヤマ トモコ)
片山知子(かたやま・ともこ)
京都大学大学院教育学研究科臨床教育学専攻博士後期課程 研究指導認定退学。博士(教育学)。臨床心理士、公認心理師。精神病院や児童養護施設の勤務を経て、現在、クリニック勤務、京都女子大学大学院発達教育学研究科・京都先端大学大学院人間文化研究科・大阪大学大学院人間科学研究科の非常勤講師。専門は心理療法(心理面接、遊戯療法)、精神科における面接や心理テスト(WAISやロールシャッハテストなど)。主な著書に『心理臨床における「私」との出会い〈京大臨床シリーズ10〉』(創元社,2014年,分担執筆)。主な論文に「プレイセラピーにおける混沌と言葉」(箱庭療法学研究,13 (1), 3-14, 2000年)「統合失調症の長期入院患者が社会に居場所を見出すまで」臨床心理学,5 (6), 761-766, 2005年)、「イメージにおける女性性の交流と旅立ち」(箱庭療法学研究,25 (1), 3-14, 2012年)「心理療法の終結におけるイメージのおさめ方に関する一考察」(心理臨床学研究,(32) 6, 673-682, 2015年)など。

※著者紹介は書籍刊行時のものです。
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