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箱庭療法学モノグラフ第15巻
「母なるものの元型」イメージがもたらす心の変容
事例に見る「二度生まれの心理療法」論
井上 靖子 著
内容紹介
元型的イメージが産み出す新たなる自己像
元型の一つ、「母なるものの元型」は、生と死、慈母と恐母など相反するイメージが表裏をなし、中でも包み込む「容器」イメージが重要であるとされる。この両義性を持つ元型は、セラピストとの関係性の中でしばしば人知を超えた自律的な働きを見せ、クライエントの夢やイメージ表現として展開するが、セラピストはそれをいかに受け止め、また心の変容や治癒を導くのか。4事例から心理療法における治療的意義について考察を深める。もっと見る
目次
序章 本書の目的と構成
第Ⅰ部 「母なるものの元型」に関する理論的検討
第1章 心理臨床における「母なるものの元型」についての先行研究
第1節 母子一体性(根源的一体性)に着目する治療論
第2節 ユングの個人史と「母なるものの元型」
第3節 本書の論点の位置づけ
第2章 本書の方法論
第1節 問題と目的
第2節 事例研究論の比較検討
第3節 心理療法における心的現実
第4節 事例研究論を裏づける臨床観
第5節 事例研究論の新たな展開
第Ⅱ部 「母なるものの元型」から見た事例の実践的検討
第3章 虐待を受けた子どもの心理療法
第1節 事例Aの概要 小学校2年生男児A男
第2節 集団遊戯療法過程
第3節 A男の心の傷つき
第4節 「母なるものの元型」の両義性イメージの表出と根源的一体性
第5節 自己像の誕生と悪の自覚 000
第6節 「母なるものの元型」の両義性の超越的な容器イメージ
第7節 「母なるものの元型」の視点をもつことの意義
第4章 「いのちの水で綺麗になる」と述べた前思春期女児の心理的成長
第1節 事例Bの概要 小学校3年生女児B子
第2節 心理療法過程
第3節 B子の心の問題――自分を出せない不安と「母なるものの元型」的イメージ
第4節 B子を取り巻く人間関係や相談構造と「母なるものの元型」的イメージ
第5節 宇宙人の目玉の殺害と再生――いのちの水の流出
第6節 心的エネルギーの活性化と自己像の誕生
第7節 いのちの水イメージで綺麗になる――宇宙的な「母なるもの」の内在化
第5章 「私は六条御息所だ」と述べた思春期女児の心理療法
第1節 事例Cの概要 小学校6年生女児C子
第2節 心理療法過程
第3節 C子の孤立感と「母なるものの元型」の傷つき
第4節 相談構造と「母なるものの元型」の容器イメージ
第5節 イニシエーションとしての相談過程――闇の母神像による癒し
第6節 六条御息所という闇の母神像を生きる
第6章 夢と描画表現にみる「母なるものの元型」の傷つきと癒し
第1節 事例Dの概要 青年期女性D子
第2節 心理療法過程
第3節 拠り所のない孤立感と「母なるものの元型」の否定的影響
第4節 夢見における「天空」と「大地」の布置
第5節 描画表現を通した「天空」と「大地」のイメージの結合イメージ
第6節 「母なるものの元型」の傷つきと癒し
第7章 総合考察――「母なるものの元型」と心理療法
第1節 「母なるものの元型」的イメージから見た4事例のクライエントの心の傷つきの特徴と表現方法
第2節 4事例の心理療法過程における治癒の契機――「母なるものの元型」の両義性の超越的な容器イメージ
第3節 4事例の心理療法過程における共通性と差異性――「母なるものの元型」の容器イメージの多様な現出
第4節 「二度生まれ」のモチーフと神話イメージ
第5節 「二度生まれの心理療法」の特徴
第6節 本書の課題と今後の展望
註
引用文献
索引
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著者紹介
※著者紹介は書籍刊行時のものです。[著]井上 靖子(イノウエ ヤスコ)
井上靖子(いのうえ・やすこ)
1963年、兵庫県神戸市生まれ。大阪女子大学大学院文学研究科社会人間学専攻修士課程修了。大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科にて学位取得。博士(人間科学)。現在、兵庫県立大学大学院教授。臨床心理士。公認心理師。
主な著書に『経験と理論をつなぐ心理学』(八千代出版,2020年,編著)、『生きる力を育てる臨床心理学』(保育出版社,2013年,分担執筆)。主な論文に「夢と描画表現にみる『母性』の傷つきと癒し」(ユング心理学研究,5,117-138,2013年)、「虐待を受けた子どもの遊戯療法――「母なるものの元型」のイメージ化とその両義性の結合の観点から」(兵庫県立大学環境人間学部研究報告第16号,11-21,2014年)、「南インドの床絵コーラムについての分析心理学的考察」(ユング心理学研究,10,131-150,2018年)など。もっと見る
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