現場からあなたに語る公認心理師の職責

本書は、いま、公認心理師として働くとはどういうことか、様々な立場の著者がそれぞれの現場から自らの言葉で読者に伝える。

第１章・第２章では、公認心理師とはそもそもどんな資格・職業なのか、どんな義務や職業倫理があるのかをわかりやすく伝える。
第３章以降では、医療・教育・福祉・産業・司法分野での公認心理師の実践における、その現場の仕事に就くに至った経緯、具体的な仕事内容や１日のスケジュール、事例、仕事への思いなどを著者自身の立場から語ることで、公認心理師の職業的な魅力を伝える。さらに、卒後訓練や開業臨床の実際、大学や現場での研究活動の実際についても当事者の視点から語り、公認心理師のキャリアの積み方や研究者としてのあり方についても伝える。
さらに、本書全体を通して、公認心理師の職責を学ぶ上で重要なキーワードを、各章の本文と関連づけながらくわしく解説する。

大学の公認心理師養成カリキュラムの必修科目「公認心理師の職責」に対応しており、国家試験にも役立つ内容である。また、すでに公認心理師として働いている人にとっても、日々の仕事や今後のあり方について本書を通してあらためて学び直し、考えることができる。

はじめに

第１章　公認心理師の役割
　　　　　――心の支援者になりたい人に知ってほしいこと……小泉　誠
１　公認心理師とは
２　公認心理師の仕事
３　公認心理師はどこにいるのか？　他の資格と何が違うのか？
４　公認心理師の課題と魅力

第２章　公認心理師の法的義務と倫理
　　　　　――専門家として望ましい態度とは……山根隆宏
１　公認心理師の法的義務
２　公認心理師の職業倫理
３　情報の適切な取り扱い
４　関係者等との連携や協働

第３章　医療　精神科
　　　　　――精神科って恐いところ？……小林　陵
１　医療で働きたい！
２　精神科の心理師の毎日
３　心理検査はどう取るの？
４　心理療法はどうやるの？
５　精神科デイケアでお料理したり卓球したり
６　精神科は恐いわけではなく

第４章　医療　身体疾患を扱う精神科
　　　　　――医療現場で病いとともに生きることを支えるということ……吉田三紀
１　医療機関における心理職の実際
２　心理職としての私と仕事への思い
３　当院の心理職としての業務内容
４　事　例
５　心理職としての倫理、心理職である私の心と行く末
６　医療の発展とともに求められる心理職の役割と未来

第５章　教育　非常勤スクールカウンセラー
　　　　　――子どもを見守る存在として……渡邉佳代
１　非常勤心理職の魅力を伝えたい
２　非常勤スクールカウンセラーの仕事とは
３　事　例
４　１人の大人として、学校現場で大切にしたいこと

第６章　教育　常勤スクールカウンセラー
　　　　　――学校教育に深く根差す心理職の仕事……鈴木ゆみ
１　常勤スクールカウンセラーとは？
２　常勤スクールカウンセラーの仕事① 様々なアセスメント　
３　常勤スクールカウンセラーの仕事② 様々な心理支援の形
４　連携と倫理、その他業務

第７章　福祉　児童養護施設
　　　　　――児童福祉施設で「心理療法担当職員」は何をしている？……中植満美子
１　心理療法担当職員になった理由
２　児童養護施設での心理職の職務内容
３　仕事と生活
４　施設臨床の実際
５　児童養護施設の過去、現在、未来

第８章　福祉　障害児通所支援
　　　　　――子どもの発達にじっくり携わる仕事……安東大起
１　児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援とは？
２　障害児通所支援に流れ着いたある心理職
３　児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援で心理職は何をしているのか？
４　これからこの業界へ来てくれる人へ

第９章　産業　企業カウンセラー
　　　　　――関係部署との連携とチームワークの実際……鈴村亜紀子
１　産業領域の仕事に就いた経緯
２　企業の常勤心理相談員の１日
３　企業内に公認心理師がいることのメリット
４　復職支援の実際
５　予防的支援と職場のメンタルヘルス向上への貢献
６　企業内で心理職として働くことの醍醐味

第10章　産業　外部EAP
　　　　　　――働きやすさと働きがいを目指す外部相談機関での活動……榎本正己
１　外部EAPと当社での仕事
２　外部EAPの日々の仕事の実際
３　事　例
４　EAPの苦労とやりがい

第11章　司法　少年鑑別所
　　　　　　――“問題”に隠れたつまずきをキャッチする……鍋島宏之
１　少年鑑別所の心理職の仕事
２　心理技官の実務
３　加害者臨床に触れてみる
４　心理技官としてどう生きていくか

第12章　司法　PFI事業
　　　　　　――PFI刑務所ってなんだろう？……谷家優子
１　自己紹介およびこれまでと今の仕事
２　PFI刑務所について
３　司法領域で出会う依存症と逆境体験を有する人たち
４　私の今後

第13章　キャリア　卒後訓練　
　　　　　　――専門家アイデンティティを支える自己マネージメント力……吉沢伸一
１　訓練プロセスにおける様々な学び
２　臨床実践と訓練の必要性
３　どうして卒後訓練に取り組む必要があるのか
４　スーパーヴィジョン（ＳＶ）から学ぶ
５　書籍・論文から学ぶ
６　⼼理療法を受けることから学ぶ
７　経験から学ぶ

第14章　キャリア　開業臨床
　　　　　　――心理職を志す動機と開業臨床とのつながり……長川歩美
１　開業するという選択
２　開業の動機をつかむ
３　開業臨床の職務
４　開業臨床を営む
５　開業臨床を生きる

第15章　研究　大学
　　　　　　――研究を基に社会を支える……永浦　拡
１　私が大学教員になるまで
２　大学教員としての仕事
３　大学教員としての成長・葛藤・生活
４　大学の今後と公認心理師としての大学教員の使命

第16章　研究　現場
　　　　　　――現場実践を言葉にすることの営み……浜内彩乃
１ 「伝える・教える」仕事を始めるまでの道のり
２ 「教える」ことと経営視点の重要性
３　研究するための第一歩
４　自分にできる第一歩を探す

索　　引

［編著］小泉 誠（コイズミ マコト）
大阪大学大学院人間科学研究科人間科学専攻修了。博士（人間科学）。専門は臨床心理学。現在、琉球大学人文社会学部人間社会学科心理学プログラム講師。公認心理師・臨床心理士。

［編著］山根 隆宏（ヤマネ タカヒロ）
神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士課程後期課程心身発達専攻修了。博士（学術）。専門は発達臨床心理学、発達障害児家族支援。現在、神戸大学大学院人間発達環境学研究科人間発達専攻准教授。公認心理師・臨床心理士。主な著書・訳書に『発達障がいといじめ』（共著、学苑社、2023）『子どもが楽しく元気になるためのADHD支援ガイドブック』（共訳、金剛出版、2022）など。