心理臨床における個と集団

人間は一人では生きられないが、一人で死んでいくしかない。人間がもつこの矛盾は、「個と集団」のせめぎあいとして、生活に影響を及ぼす。個人心理療法を中心として発展してきた心理療法も、いまや「集団」を視野にいれないわけにはいかない。本書は、「個と集団」の視点から、さまざまな集団における心理臨床を考察する論文集。家族・教育・医療・福祉・司法・グループ療法等の各分野における、75人のセラピストによる論考を収める。京都大学心理臨床学教室が企画・編集した「京大心理臨床シリーズ」の第５巻。

「京大心理臨床シリーズ」刊行にあたって　　　
はじめに　　　岡田康伸

第１章　心理臨床における個と集団という視点　　　
１　心理臨床における個と集団という視点　　　河合俊雄
２　人の個別性と集合性から考える心理臨床　　　金山由美
３　古典的な個人心理療法からシステム論的観点を備えた個人心理療法へ　　　杉原保史
４　大地と身体――ソマトポイエシスにおける個と集団　　　濱野清志
５　個人心理療法と集団心理療法の統合を目指して――不登校児童通所施設での実践から　　　坂田浩之・松本聡子・駿地真由美・石原　宏・藤本麻起子・小橋正典・高木　綾・野口寿一・福田　斎・梅村高太郎
６　心理臨床における多者心理学の可能性について　　　西隆太朗
　　■コラム■あそびにおける個と集団　　　谷口奈青理
　　■コラム■ヤンバルの少年少女と共同体――スクールカウンセラーとしての関わりから　　　片本恵利
　　■コラム■個としての物語生成と心理療法家としての歩み　　　三好智子
　　■コラム■心理療法における個と集団の関係　　　今西　徹
　　■コラム■個としての集団、集団としての個　　　井上嘉孝

第２章　家族における個と集団　　　
１　親面接における家族の表象　　　荒井真太郎
２　個から関係へ、そして心の生態系へ――心の成り立ちに環境はいかに関わっているのか　　　石谷真一
３　親子関係支援におけるアタッチメント理論と実践の橋渡し――欧米での歩みの概観と日本での保健機関における親グループの考察　　　北川　恵
４　機能不全家庭における心的外傷からの回復の臨床心理学的アプローチ　　　杉野健二
５　子どもを使った錬金術――親からの投影同一化　　　髙森淳一
　　■コラム■赤ん坊をめぐる投影同一視　　　伊藤（阿部）一美
　　■コラム■母子教室が少人数である意義について　　　鳴岩伸生
　　■コラム■親子並行面接という構造のはざまから見えてくる家族　　　安立奈歩
　　■コラム■個であること、母親であること　　　植田有美子

第３章　グループ療法　　　
１　グループワークにおける差異と器　　　大山泰宏
２　家族心理面接における個と集団　　　亀口憲治
３　グループにおける変容について　　　國吉知子
４　ワールドワークのパースペクティブ　　　藤見幸雄
５　グループワークとしての事例懇談会――児童養護施設における養護職員支援　　　森　茂起
６　集団活動における心理臨床的視点について　　　浅田剛正・平松朋子

第４章　グループによる訓練　　　
１　グループ・フィンガーペインティングにおける個の表現と他者との共存　　　岡本直子
２　心理臨床教育におけるグループ体験　　　高石浩一
３　訓練段階における非言語的グループワークの意義――グループでの箱庭制作、フィンガーペインティングにおける表現を通して　　　竹林奈奈
４　事例検討会における個と集団　　　山本有恵
５　保育者養成コースにおける“表現する”活動の試み　　　番匠明美
　　■コラム■臨床家の訓練におけるグループスーパーヴィジョンの効用　　　永田法子

第５章　教育臨床における個と集団　　　
１　教育臨床的授業の試み　　　青木真理
２　教育現場における心理臨床　　　康　智善
３　学校教育と心理臨床　　　東城久夫
４　学校支援ボランティアを利用した発達障害児への支援　　　吉岡恒生
５　適応指導教室における個と集団　　　西嶋雅樹
６　学校臨床における「定点」について――「個」に寄り添う姿勢を通して見えてくるもの　　　牧　剛史・安立奈歩・久米禎子・鳴岩伸生・古屋敬子・高嶋雄介・須藤春佳
７　学校臨床現場における個と集団――スクールカウンセラーと教師との関係性に焦点づけて　　　伊藤美奈子
　　■コラム■スクールカウンセラーの個への関わりと学校教員集団の変化　　　石原みちる
　　■コラム■保護者対象のグループワーク　　　近森　聡
　　■コラム■スクールカウンセリングにおける教師集団との関わり――潜在的ニーズに注目して　　　徳田仁子
　　■コラム■学校の中の守秘義務　　　三上英子
　　■コラム■不登校支援における「個別」支援と「集団」支援　　　千原雅代
　　■コラム■学校における個と集団――スクールカウンセラーの役割　　　伊原千晶

第６章　医療現場における個と集団　　　
１　作業療法グループに臨床心理士として関わる　　　石金直美
２　医療現場における個と集団――心理臨床と異文化研究の視点から　　　古澤有峰
３　アトピー性皮膚炎患者の社会生活に関する一考察――自己と世界の境界を病む体験から見えてくるもの　　　武藤百合
４　精神科診療所の心理臨床における個と集団　　　原田　徹
　　■コラム■生活技能訓練への招待状　　　坂崎浩久
　　■コラム■総合病院の医療スタッフという集団の中で生き延びること　　　多田昌代
　　■コラム■青年期デイケアでの体験から――枠をめぐって　　　山川裕樹

第７章　福祉・司法現場における個と集団　　　
１　重い知的障害をもつ成人の心理面接事例　　　山森路子
２　軽度発達障害児における社会適応と自己実現――情短施設での被虐待児との遊戯療法過程から　　　中鹿　彰
３　司法領域において子どもの意見を聴く　　　藤川　浩
４　被虐待児の個の生成と集団への関係について　　　井上　真
５　児童福祉施設における心理臨床　　　茂木　洋
　　■コラム■少年事件における「集団」の活用　　　遠藤雅夫
　　■コラム■老人集団療法の経験から　　　橋本知子

おわりに　　　桑原知子

人名索引
事項索引
執筆者紹介

［編］岡田 康伸（オカダ ヤスノブ）

［編］河合 俊雄（カワイ トシオ）

［編］桑原 知子（クワバラ トモコ）

［著］青木 真理（アオキ マリ）

［著］浅田 剛正（アサダ タカマサ）

［著］安立 奈歩（アダチ ナホ）

［著］荒井 真太郎（アライ シンタロウ）

［著］石金 直美（イシカネ ナオミ）

［著］石谷 真一（イシタニ シンイチ）

［著］石原 宏（イシハラ ヒロシ）

［著］石原 みちる（イシハラ ミチル）

［著］伊藤 一美（イトウ カズミ）

［著］伊藤 美奈子（イトウ ミナコ）

［著］井上 真（イノウエ マコト）

［著］井上 嘉孝（イノウエ ヨシタカ）

［著］伊原 千晶（イハラ チアキ）

［著］今西 徹（イマニシ トオル）

［著］植田 有美子（ウエダ ユミコ）

［著］梅村 高太郎（ウメムラ コウタロウ）

［著］遠藤 雅夫（エンドウ マサオ）

［著］大山 泰宏（オオヤマ ヤスヒロ）

［著］岡本 直子（オカモト ナオコ）

［著］片本 恵利（カタモト エリ）

［著］金山 由美（カナヤマ ユミ）

［著］亀口 憲治（カメグチ ケンジ）

［著］康 智善（カン ジソン）

［著］北川 恵（キタガワ メグミ）

［著］國吉 知子（クニヨシ トモコ）

［著］久米 禎子（クメ テイコ）

［著］小橋 正典（コハシ マサノリ）

［著］坂崎 浩久（サカザキ ヒロヒサ）

［著］坂田 浩之（サカタ ヒロユキ）

［著］杉野 健二（スギノ ケンジ）

［著］杉原 保史（スギハラ ヤスシ）

［著］須藤 春佳（スドウ ハルカ）

［著］駿地 眞由美（スルジ マユミ）

［著］高石 浩一（タカイシ コウイチ）

［著］高木 綾（タカギ アヤ）

［著］高嶋 雄介（タカシマ ユウスケ）

［著］髙森 淳一（タカモリ ジュンイチ）

［著］竹林 奈奈（タケバヤシ ナナ）

［著］多田 昌代（タダ マサヨ）

［著］谷口 奈青理（タニグチ ナオリ）

［著］近森 聡（チカモリ サトシ）

［著］千原 雅代（チハラ マサヨ）

［著］東城 久夫（トウジョウ ヒサオ）

［著］徳田 仁子（トクダ キミコ）

［著］中鹿 彰（ナカシカ アキラ）

［著］永田 法子（ナガタ ノリコ）

［著］鳴岩 伸生（ナルイワ ノブオ）

［著］西 隆太朗（ニシ リュウタロウ）

［著］西嶋 雅樹（ニシジマ マサキ）

［著］野口 寿一（ノグチ トシカズ）

［著］橋本 知子（ハシモト トモコ）

［著］濱野 清志（ハマノ キヨシ）

［著］原田 徹（ハラダ トオル）

［著］番匠 明美（バンショウ アケミ）

［著］平松 朋子（ヒラマツ トモコ）

［著］福田 斎（フクダ イツキ）

［著］藤川 浩（フジカワ ヒロシ）

［著］藤見 幸雄（フジミ ユキオ）

［著］藤本 麻起子（フジモト マキコ）

［著］古澤 有峰（フルサワ ユミ）

［著］古屋 敬子（フルヤ ケイコ）

［著］牧 剛史（マキ タケシ）

［著］松本 聡子（マツモト サトコ）

［著］三上 英子（ミカミ エイコ）

［著］三好 智子（ミヨシ トモコ）

［著］武藤 百合（ムトウ ユリ）

［著］茂木 洋（モテギ ヨウ）

［著］森 茂起（モリ シゲユキ）

［著］山川 裕樹（ヤマカワ ヒロキ）

［著］山本 有恵（ヤマモト アリエ）

［著］山森 路子（ヤマモリ ミチコ）

［著］吉岡 恒生（ヨシオカ ツネオ）