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どこへ行こうか、心理療法
神田橋條治対談集
神田橋 條治 著 / 成瀬 悟策 著 / 村山 正治 著 / 増井 武士 著 / かしま えりこ 著 / 藤原 勝紀 著
内容紹介
臨床の巨匠たちの山頂語り
精神科医・神田橋條治がわが道を極めた三人の心理臨床家たちと行った対談を一冊にまとめたもの。神田橋の卓抜なインタビュアーとしての技が、三人の臨床家それぞれの特質を見事にとらえ、それを豊かに引き出してゆく。
冒頭の増井武士との対談は、かつて分析家(スーパーヴァイザー)–被分析家(ヴァイジー)であった二人の当時の様子を彷彿とさせ、熟練の域に達してもなお師に教えを請う姿勢をとる増井の姿からは、よりよき「臨床」を追い求め続ける実践家の真摯さが伝わってくる。
次の村山正治との対談では、村山が学生の頃に出会った恩師たちの言葉や、黙ってじっと待ってくれたことなど、学生を育てる際の根底に、自身の若かりし日の苦悩の経験があることが明かされる。さらにカール・ロジャースとの出会い、彼からの学び、自分にとってのエンカウンター・グループについてなど、村山が臨床において何が大切かをひたすら考え、追い求めてきたことが、そのまま次世代を育てる際に生かされていることが理解できる。
最後の成瀬悟策との対談では、年長の成瀬への神田橋の気遣いや配慮が随所に感じられるが、時には鋭く切り込む場面もあり、癒しと緊張とが刻々、ない交ぜになってゆく。「心」と「体」の関係から始まり、成瀬が古澤平作に精神分析を受けたときの話、ことに動作法に関しては、理論と体験について、自己治療ということ、どこまで治療するのか、技をどう伝えるのかなど、創始者である成瀬にしか聞けない話が続き圧巻である。
本書は、心理臨床実践を支える根幹に触れるものとして臨床家必見の対談ではあるが、その道の個性豊かな匠たちのいかにも人間らしい、飾らぬ魅力に満ち溢れた語りとしても、十分楽しみながら読むことができる。もっと見る
目次
序……………………藤原勝紀
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心の成りゆくままに──二人の精神療法家から学ぶ 増井武士×神田橋條治
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「今、ここ」を生きる
「頭が真っ白」になる経験
パソコンでカウンセリングができるか
怒りだしたジェンドリン
治療者は一生治される
クライエントは治らなくても治療者は治る
心理療法の根源にあるのはエンカウンターである
自分の中に多くのフィルターやスイッチがある
静かなる無我夢中
健康な退行
面接は日々新た、だから飽きない
現実よりも、どんなイメージを持つかのほうが大事
「出会った関係に別れはない」
ネガティヴなイメージが語られるとき
すべてが崩れてゆく強烈な体験
ご破算にして面接に臨む
資質のある人には、まず生産的崩壊を起こさせる
日本人としての美学を持つ
いざ質疑応答へ
より根本のところを発言する
「関係を生きる」ということ
治療観の変遷
警告の背後にあるもの
「エンカウンター」について
面接後、患者さんの顔や名前を忘れてしまう
面接の様子を映像で残すことは?
[素描] 舞台裏のこと……………………かしまえりこ
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心理臨床家をどう育てるか 村山正治×神田橋條治
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二人の出会い
「ゆっくり探せばいい」
自分の人生に納得することが大事
ストンと落ちて、そして落ち着く
ロジャースとの出会い
自分に厳しく、準備を怠らない人
自分で見て、体験して考えろ
受け継いでゆくという発想に否定的
エンカウンター・グループと紛争
エンカウンター・グループで何が変わるのか
別々にいてつながっている
あなたの関心はどこにあるのか
「何が起こっているのか」に答えるべき時
文字言語で学習された窮屈さを解放する
本人の志を感じてそれを大事にする
いつもちょっと未来を考える
[素描] 椅子の周辺……………………かしまえりこ
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どこへ行こうか、心理療法 成瀬悟策×神田橋條治
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表題に行く着くまで
「心」の治療になぜ「体」を使わないのか
フォーカシングについて思うこと
精神分析を受けてみた
「言葉」よりも「感じ」を大事に
「緊張感」について
「動作法」の考え方
命は本来、考えたり論じたりするものではない
「心」は「動作」によってつくられる
「主体活動」のない生き物はいない
日常生活の中にある生きるための力、それが「緊張感」
「論」では伝えられないもの
分析を受けるとアグレッションの力が出てくる
自分の中の「甘え」の発見から、日本文化論へ
自由連想はすばらしい
精神分析の天才を苦しめた力
理論を介さない観察から、「体」に注目
西洋ではなぜ「言葉」が重視されるのか
理論よりも実感的な体験のほうが大切
動作法の本質は自己治療──最後まで治さない
どこまで援助するのか──余計なことをしない
弟子に伝える
目の前でやって見せる
弟子と競う
ある程度まではできるようになる
わかれば、できる
変化のときには「あるがまま」が生じる
体におまかせ──感じて緩める
重力に馴染む
「自分がやっている」という感じ
まずは自分で努力する
意識化していたものが無意識化する
「なんだかセンス」をどう伝えるか
薬を使うことの懸念
[素描] 山頂に集う……………………かしまえりこもっと見る
著者紹介
※著者紹介は書籍刊行時のものです。[著]神田橋 條治(カンダバシ ジョウジ)
神田橋 條治(かんだばし じょうじ)
鹿児島県生まれ。精神科医。1961年に九州大学医学部を卒業後、1984年まで同大学医学部精神神経科、精神分析療法専攻。1971年から1年間、モーズレー病院ならびにタビストックに留学。現在、鹿児島市にある伊敷病院に精神科医として非常勤で勤めるかたわら、全国の研修セミナーに招かれて後輩の育成と指導に努める。
著書に『精神科診断面接のコツ』『精神療法面接のコツ』『精神科養生のコツ』『発想の航跡』『発想の航跡2』『「現場からの治療論」という物語』(いずれも岩崎学術出版社)、『治療のこころ1 ~ 8, 10 ~ 13』『対話精神療法の初心者への手引き』(いずれも花クリニック神田橋研究会)、『対談 精神科における養生と薬物』(診療新社)、『神田橋條治精神科講義』『神田橋條治医学部講義』『治療のための精神分析ノート』『神田橋條治が教える経絡・ツボ療法』(創元社) ほか多数。[著]成瀬 悟策(ナルセ ゴサク)
成瀬 悟策(なるせ ごさく)
1924年岐阜県生まれ。医学博士、臨床心理士第1号。九州大学名誉教授。日本リハビリテイション心理学会名誉理事長。日本臨床動作学会名誉会長。
1950年に東京文理科大学心理学科を卒業後、東京教育大学助手・講師、1962年から九州大学教育学部助教授をへて同教授。1989年から九州女子大学・九州女子短期大学の学長を経て、2004年から2009年まで、吉備国際大学教授、吉備国際大学大学院教授を務める。日本催眠医学心理学会理事長・日本心理臨床学会理事長・日本リハビリテイション心理学会理事長などを歴任。2019年8月3日、95歳で逝去。
著書に『催眠面接の技術』『催眠面接法』『動作訓練の理論』『動作療法』『動作のこころ』(いずれも誠信書房)、『臨床動作学基礎』(学苑社)、『姿勢のふしぎ』(講談社)ほか多数。[著]村山 正治(ムラヤマ ショウジ)
村山 正治(むらやま しょうじ)
1963年京都大学大学院教育学研究科博士課程修了、現在、東亜大学大学院臨床心理学専攻教授。九州大学名誉教授。臨床心理士。元、学校臨床心理士ワーキンググループ代表。著書『ロジャースをめぐって――臨床を生きる発想と方法』(金剛出版)、編著書『新しい事例検討法 PCAGIP入門』『「自分らしさ」を認めるPCAグループ入門』『現場で役立つスクールカウンセリングの実際』(いずれも創元社)、共編著『臨床心理士のスクールカウンセリング』『マンガで学ぶフォーカシング入門』(いずれも誠信書房)ほか多数。[著]増井 武士(マスイ タケシ)
増井 武士(ますい たけし)
1945年生まれ。九州大学教育学部大学院博士課程修了。産業医科大学医学部准教授(教育学博士)、同大学病院精神・神経科および産業医実務研修センターを併任。日本心理臨床学会常任理事、同学会倫理委員長などを経て同学会編集委員、同学会理事などを歴任。九州産業大学国際文化学部教授を経て、現在、東亜大学大学院客員教授。
著書に『治療的面接への探求(Vol. 1~4)』(人文書院)、『迷う心の「整理学」』(講談社現代新書)、『不登校児から見た世界』(有斐閣)、『来談者のための治療的面接とは』(遠見書房)ほか多数。[著]かしま えりこ(カシマ エリコ)
かしま えりこ【素描(エッセイ)】
かしまえりこ心理室代表。一般社団法人日本臨床心理士会理事。放送大学分担協力講師。福岡女学院大学大学院非常勤講師。[著]藤原 勝紀(フジワラ カツノリ)
藤原 勝紀(ふじわら かつのり)【序文】
一般社団法人 日本心理臨床学会理事長。公益社団法人日本臨床心理士資格認定協会専務理事。京都大学名誉教授。もっと見る
訂正のお知らせ
2022年3月刊行の『どこへ行こうか、心理療法』に誤解を招く表記がありました。修正してお詫び申し上げます。
修正内容につきましては、こちらをご参照ください。 >>>PDF:343KB
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