やさしいカウンセリング講義

恋愛・結婚・親子・友だち・仕事・カウンセリング関係など、人間関係すべてについて、またカウンセリングそのものについて関心のある人たちに、豊かであたたかい関係を育むためにはどうすればよいかを、19の講義形式で丁寧に説く。カウンセラー、教師、福祉士、医師、看護師など、人々の援助にかかわる人たちはもちろん、よりよい人間関係を求める一般の人たち、カウンセリングに関心がある人たちなど、初学者や初心者に最適の書。

はじめに　　003
人間関係ついてのこの授業の目的、対象者、この授業が拠って立つ基本的な見かたについてお話しします。

第Ⅰ部　あたたかく豊かな癒しの関係　　009

第1講　カウンセリングのものの見方　　010
プロのカウンセリングと素人の悩み相談はかなり違います。ここでは、人がより楽に、より自由に、よりその人らしく花開いて生きられるように助けるカウンセリングのものの見方について学びます。

†コラム　臨床心理士　013

第2講　あたたかく豊かな癒しの関係の条件　
その1│二人の人間がこころのふれ合いをもつこと　　014
わたしたちは人とのあいだで傷つき、人とのあいだで癒されます。わたしたちがより楽に、自分らしさを花開かせて生きられるようになる最初の条件、それは誰かとこころがふれ合うことです。ここでは関係性の大切さについて学びます。

†コラム　カウンセラーと来談者の関係性　017
iii
第3講　あたたかく豊かな癒しの関係の条件　
その2│来談者はもろく傷つきやすい状態にあること　　018
人は、幼いころに親から認め愛されようとすることから、自分の気持ちをいつわることをおぼえます。そうして自分の本当の気持ちを切り離されるほど、自分らしさを失い、生きるのが苦しく、つまらなくなります。その過程について学びます。

†コラム　アメリカ人も、カウンセリングをいやがる　024

第4講　あたたかく豊かな癒しの関係の条件
その3│相手との関係のなかで純粋であること　　029
わたしたちが、こころの悩みや負担に苦しむ人を助けようとするとき、わたしたち自身の、人としてのありようがもっとも大切です。苦しむ人に良くなってくれることを求めると助けられません。またわたしたちの中に、相手のことを思いやる優しい気持ちとは反対の気持ちが湧くこともあります。助ける人自身のありかたを見つめてこそ、人の援助ができます。ここでは援助者のこころのありようについて学びます。

第5講　あたたかく豊かな癒しの関係の条件
その4│ありのままの相手を受けいれ大切に思うこと 　　043
わたしたちは自分のことを無条件に受けいれられ尊重されるとき、もっと楽になって本来の自分らしく成長します。無条件の受容、無条件の尊重とはどんなことなのでしょう。

第6講　あたたかく豊かな癒しの関係の条件
その5│話し手の身になって気持ちを理解すること　　050
人は誰でも、自分のことをわかってほしいととても強く願っています。わたしたちは自分の気持ちや考え、経験を誰かに深くわかってもらい受け入れてもらうとき、より楽に自分らしく花開いて生きてゆくエネルギーが湧きます。他人をそのように深く純粋に理解するために大切なことについて学びましょう。

第7講　共感的に理解するためには　　075
悩む人の相談にのるとき、相手のことを理解しづらいことがよくあります。どうしてそんなふうに悪く受け取るんだろう？　どうしてその程度のことで苦しむんだろう？　そのようなときに大切なことは何かについて学びましょう。

第Ⅱ部　こころの傷つきについての理解を深める　　079

第8講　過去の痛みを繰り返してしまう――転移という現象　　080
わたしたちは誰でも、現実に対して反応するのではなく、知らず知らずのうちに、過去に負ったこころの傷の痛みから反応してしまうことがよくあります。過去の痛みからくる反応を「転移」と呼び、それが人間関係を壊したり生きることを苦しくしたりする原因になります。過去の痛みからくる反応について学びましょう。

第9講　転移反応の五つの特徴　　087
現実的な反応ではない、過去の痛みからくる反応（転移）の特徴について学びます。そういう反応は感情の種類や強さが非現実的で、矛盾しています。恋人に対する甘えと憎しみなどの反応はその典型的な例です。世の中にあまりに多く、苦しみの源でもある過去の痛みからくる反応の特徴について具体例を通して学びましょう。

第10講　自由に感じ表現することにブレーキをかけてしまう│抵抗という現象　　101
人は誰かに悩みごとの相談をするとき、本当に自由にすなおに話すことはなかなかできません。悩む人の助けになるには、その抵抗について理解することが大切です。抵抗の源と特徴を学びましょう。

第11講　転移反応がカウンセリングを妨げるとき　　105
わたしたちが悩み苦しむ人を助けようとするとき、苦しむ人はわたしたちに対して、過去の痛みからくる反応を起こします。つまり転移を起こします。転移反応に気づくために必要なことを学びましょう。

第12講　過去の痛みを埋めたから解決したのか――転移治癒について　　111
人が誰かに対して過去の痛みからくる反応を起こすのは、痛みを埋めてその苦しみから逃れようとするからです。わたしたちが人からそのような転移反応を起こされたときには、彼・彼女の痛みを埋めたくなったり、反対に彼・彼女を避けたくなったりします。そのどちらも結局は助けにならないことが多くあります。それでは何が助けになるのでしょうか。

第13講　転移の痛みはどのように癒されるのか　　122
わたしたちの悩み苦しみが深く本当に癒されるためには、あたたかい人間関係の中で過去の痛みに直面し、感じきることが必要です。その過程が起きるために大切なことは何かについて学びましょう。

第14講　理解しがたい人をどう理解できるか　　131
悩み苦しむ人のことを分かってあげようとしてもどうしても理解しづらいときがあります。そんなとき、その人の気持ちや行動を、現実に基づいたものではなくて過去の痛みからくる反応だと見ると理解しやすくなります。その方法について学びます。

第15講　あたたかく豊かな癒しの関係の条件　　
その6│純粋さ、無条件の尊重、共感的理解が相手に伝わること　　140
より楽で自分らしくなれる関係を育むには、この授業で学んできた聞き手（援助者）の態度が相手に伝わることが必要です。どうすればうまく伝わるのでしょうか。

第Ⅲ部　変化と成長について　　143

第16講　癒される関係のなかで人はどう変化するか　　144
あたたかく豊かな関係、より自分らしさを花開かせて楽に生きられるようになる癒しの関係のなかにいると、わたしたちにはどのような変化が起こるのでしょう。

第17講　スピリチュアルな視点から見た、あたたかく豊かな癒しの関係　　159
あたたかく豊かな癒しの関係を、心理学を超えたスピリチュアルな視点から見てみましょう。さらに、スピリチュアルな視点から人生における悩みの意味を考えましょう。

第18講　カウンセリングの実際　　166
カウンセリングは秘密保持が大切なので、その様子が公開されることはまずありません。ここでは、カウンセリングの達人であるカール・ロジャースの貴重な公開カウンセリングの逐語記録を検討することで、カウンセリングで何が起きるかを学びましょう。

第Ⅳ部　補講　　219

補講1　無意識と過去の影響を明らかにする――精神分析理論　　220
精神分析理論の創始者であるジグムント・フロイトの理論と生涯について紹介します。

†コラム　ジグムント・フロイトの生涯　229

補講2　.いま│ここ.に純粋にいることの大切さ――人間性中心療法　　233
人間性中心療法の創始者であるカール・ロジャースの理論と生涯について紹介します。

†コラム　カール・ロジャースの生涯と人柄　240
†コラム　日本にロジャースを紹介した心理学者、正木正　243

補講3　来談者からの質問への対処の仕方　　245
カウンセリング的な援助において来談者が質問をすることはよくありますが、それに効果的に対処するのは意外にむずかしいものです。来談者の質問の意味を理解し、よりよく対処するために大切なことを学びましょう。

補講4　効果的なトレーニングについて　262
心理カウンセラーとしての能力をつけるために、とくに大切なことをお話しします。

推薦図書　　266
文　　献　　273
謝　　辞　　274
あとがき　　276

［著］古宮 昇（コミヤ ノボル）
古宮昇（こみや　のぼる）
大阪経済大学人間科学部助教授。米国州立ミズーリ大学コロンビア校博士課程修了。心理学博士（PhD. in Psychology）。著書『心理療法入門～理論統合による基礎と実践』創元社、『しあわせの心理学』ナカニシヤ出版、『大学の授業を変える～臨床・教育心理学の知見を活かした、学びを生む授業法』晃洋書房