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命を危険にさらして
5人の女性戦場ジャーナリストの証言
マリーヌ・ジャックマン 著 / アンヌ・バリエール 著 / パトリシア・アレモニエール 著 / リズロン・ブドゥル 著 / アンヌ=クレール・クードレイ 著 / 遠藤 ゆかり 訳
内容紹介
彼女たちは、強くて弱い。
出かけていく。それが彼女たちの仕事だ。現場で、できるだけ近いところから、なんらかの形で真実を確かめるために出かけていく。声なき声を聞き、拾いあげ、具体的なものとするために出かけていく。[…]
彼女たちは強くて弱い。この相反するふたつの性質をもっているのが、戦場ジャーナリストなのである。
私はこの5人の女性が好きだ。彼女たちの矛盾、心の傷、極端なまでの感受性、迷いなどは、ほかの人びとには理解できないものかもしれない。しかし、彼女たちはユニークで魅力的である。私は、物事に積極的にかかわり、戦っている彼女たちを尊敬し、敬服している。彼女たちの辞書に、あきらめるという言葉はない。
(カトリーヌ・ネイルによる「序文」より)
1980年代~現在まで、各地の紛争や革命の現場をニュースとして届けるために奔走したフランス最大のテレビ局TF1で働く5人の女性戦場ジャーナリストのエッセイ集。
男性だけが担当していた戦場ルポルタージュの世界に飛び込んだ最初期の女性ジャーナリストであるマリーヌ・ジャックマンとパトリシア・アレモニエール。
彼女らが切り拓いてきた道を追う2000年代の女性戦場ジャーナリストであるリズロン・ブドゥルとアンヌ=クレール・クードレイ。
そして2010年代にこの世界に入り、自らビデオカメラを抱え、撮影から報道までをひとりで担うことのできる映像ジャーナリストであるアンヌ・バリエール。
世代も経歴も異なる5人の女性戦場ジャーナリストが、過酷な環境での仕事にかける自身の情熱と誇り、逃れられない深い無力感や悲しみ、そしてそれらを癒すための人間的な時間について、飾らない赤裸々な言葉で綴っている。
戦場ジャーナリストは、家族や故郷から遠く離れた戦場に赴き、目の前で人が殺され、仲間を喪い、自身も銃弾やマチェーテ(山刀)に襲われるような過酷な環境のなかで、きわめて冷静に、できるかぎり公平な立場で事実を報道することを求められる。
もっとも危険な職業の一つでありながら、理解を得られず批判を受けやすい立場でもある。
しかし、感情を抑える職業意識があるからといって、感受性や記憶がなくなるわけではない。
本書は、戦場のルポルタージュではない。5人の著者が、戦場ジャーナリストとして、女性として、そしてひとりの人間として、職務においては見ぬふりをしなければならないさまざまな事柄に再び目を向け、答えを出そうと言葉を紡いだ素朴なエッセイなのである。もっと見る
目次
〈主な目次〉
訳者まえがき
序文(カトリーヌ・ネイル)
第1章 風のままに(マリーヌ・ジャックマン)
第2章 自分のカメラに身を守られて(アンヌ・バリエール)
第3章 暴力のただなかで(パトリシア・アレモニエール)
第4章 私はアラブの春とともに生まれた(リズロン・ブドゥル)
第5章 戦場で15年を過ごしたあと、テレビスタジオに戻る(アンヌ=クレール・クードレイ)
付録(地図・年表)もっと見る
著者紹介
※著者紹介は書籍刊行時のものです。[著]マリーヌ・ジャックマン(ジャックマン,マリーヌ)
マリーヌ・ジャックマン(Marine Jacquemin)
法律を勉強し、アメリカのコロンビア大学で学んだ後、アフリカ、アジア、アメリカ、レバノンの現場に長期滞在。フランスに戻り、新聞社や雑誌社、ラジオ局(RTL、ユーロップ1)で研修を重ねた。その後、TF1に入り、報道局を経て、1989年ベルリンの壁崩壊を機に国際政治局へ移る。以来、世界中のおもな紛争地での戦争を取材してきた。また、数々の国家元首にインタビューしている。
2001年には、喜劇女優のミュリエル・ロバンとともに、首都カブールに病院をつくることを目的とするアフガニスタン子ども協会を設立した。[著]アンヌ・バリエール(バリエール,アンヌ)
アンヌ・バリエール(Anne Barrier)
2000年に法学修士免状を取得し、2005年にリール・ジャーナリズム高等専門学校を卒業。映像ジャーナリストとしてTF1の報道局ルポルタージュ(ニュース)部に入る。特派員になってからは、長年、数々の紛争や革命に加え、大規模なスポーツイベント(ツール・ド・フランス、オリンピック、UEFA欧州選手権)を取材したり、フランスの美食や星付きシェフをテーマにしたシリーズ番組を制作してきた。[著]パトリシア・アレモニエール(アレモニエール,パトリシア)
パトリシア・アレモニエール(Patricia Allémonière)
パリ政治学院を卒業し、DEA(修士免状)を取得。フリー・ジャーナリストとして働き、その後、TF1にと契約。テレビ局で海外特派員に任命された最初の女性である彼女は、まずはエルサレムに拠点を置き、エジプト、ヨルダン、シリアを移動しながら、第一次インティファーダを取材。その後、中東での仕事を終え、イギリスがIRAによるテロ活動や王室の危機で揺れていた時期に、TF1のロンドン支局長となる。パリに戻ると、TF1のセキュリティ担当、国際政治局長を経て、ふたたび特派員として戦場に戻るが、2011年に負傷した。[著]リズロン・ブドゥル(ブドゥル,リズロン)
リズロン・ブドゥル(Liseron Boudoul)
パリ政治学院を卒業後、ラジオ局RFIでジャーナリズムの世界に入る。その後、ラジオ局フランス・アンテールに移った。ニュース専門放送局LCIに勤めた後、一般ニュースを担当するジャーナリストとしてTF1の報道局に入る。それをきっかけに、2005年のパリ郊外暴動事件を取材することになった。
2011年「アラブの春」の開始により、チュニジア、リビア、シリアに派遣された。その後、マリ、ナイジェリア、中央アフリカのイスラム過激派組織に対する戦争や、イラク北部の都市モスルとシリア北部の都市ラッカで勢力範囲を広げたISILへの大規模な攻撃も追った。また、定期的にパレスチナのガザを訪れたり、最近ではソマリアの飢餓も取材している。 2018年2月には、イラクとシリアでのISILに対する戦争のルポルタージュで、テレビ・ラジオ栄誉賞の「2018年の特派員」賞を受賞した。[著]アンヌ=クレール・クードレイ(クードレイ,アンヌ=クレール)
アンヌ=クレール・クードレイ(Anne-Claire Coudray)
歴史学修士免状と現代文学学士免状を取得後、1998年にリール・ジャーナリズム高等専門学校に入学。2000年にTF1で最初の研修を受け、その後数年間リール支局でニュース番組の仕事をしたほか、テレビ局フランス3のシリーズ番組制作や、テレビ局アルテのニュース番組のために外国でのルポルタージュをした。2004年にパリのTF1報道局に戻る。国際政治局では、バラク・オバマのときのアメリカ大統領選挙やハイチ地震に加えて、コートジボワールの争乱、マリの紛争、イラクでISILと戦うクルド人などを取材した。2015年に、TF1の週末のニュース番組の編集資格をもつニュースキャスターとなる。[訳]遠藤 ゆかり(エンドウ ユカリ)
遠藤ゆかり(Endo Yukari)
上智大学文学部フランス文学科卒。訳書に「知の再発見双書」シリーズ、『シュルレアリスム辞典』『世界図書館遺産』『ビジュアル版 女性の権利宣言』『ビジュアル版 子どもの権利宣言』『ビジュアル版 世界人権宣言』(いずれも創元社)、『フランスの歴史[近現代史]』(明石書店)などがある。もっと見る
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