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歴史と軍隊
軍事史の新しい地平
阪口 修平 編著
内容紹介
軍事史というと、戦史や戦略・戦術、兵器発達史などが想起されるが、本書で取り扱うのは「軍隊と社会の相互関係」である。従来、軍事史研究は戦争を反省する立場から学術分野ではタブー視されてきたが、そもそも軍隊のあり方や制度はその当時の社会状況を抜きには語れず、逆もまた然りである。本書では欧米の軍事史研究の最新潮流をふまえ、軍隊と社会、軍隊と国家、軍隊と文化などのテーマを具体的に論じ、軍事史研究の可能性を提示する。もっと見る
目次
序章 軍事史研究の新しい地平 阪口修平
――「歴史学の一分野としての軍事史」をめざして
第一節 「狭義の軍事史」と「広義の軍事史」
狭義の軍事史 広義の軍事史
第二節 本書の構成
第三節 本書の特徴と今後の課題
本書の特徴 今後の課題
第Ⅰ部 国制史からみた軍隊――戦闘・治安・徴兵
第一章 マルプラケの戦い
――戦史と歴史学の出会い 佐々木真
はじめに
第一節 マルプラケの戦い
スペイン継承戦争の勃発 フランドル戦線 一七〇九年 マルプラケの戦い
第二節 官僚による後方支援
官僚たち 食糧供給 資金
第三節 歴史のなかのマルプラケの戦い
戦史としての戦闘 戦闘の衝撃と情報収集 戦闘と負傷兵 戦闘と後方支援 戦闘と将兵 戦闘と社会 戦闘と政治
おわりに
第二章 地域住民とマレショーセ隊員
――王権の手先? あるいは民衆の保護者? 正本 忍
はじめに
第一節 隊員の職務
マレショーセの裁判管轄 隊員の活動とマレショーセのイメージ 隊員によるパトロールの有効性
第二節 隊員の出身社会層、出身地、在地性
隊員の属する社会層 隊員の出身地と在地性 隊員の在地性の功罪
第三節 隊員と接触する際の住民の反応
隊員からの働きかけに対する住民の反応 住民から隊員に働きかける場合
おわりに
第三章 帝政期ドイツにおける徴兵検査の実像
――徴兵関係資料を手がかりに 丸畠宏太
はじめに
第一節 「長い一九世紀」のドイツと一般兵役制
国民統合装置としての軍隊 社会に定着する兵役義務
第二節 マクロの視点から見た帝政期の兵員補充
帝政期の兵員補充のプロセス 帝国レベルにおける徴兵検査結果 各邦・州レベルの徴兵検査結果と地域間格差 意図的操作の可能性
第三節 ミクロの視点から見た帝政期の兵員補充
徴兵業務の「現場」 クライス・レベル、ゲマインデ・レベルから見た徴兵検査結果 「現場」
での操作の可能性
おわりに
第Ⅱ部 社会史からみた軍隊――兵士の日常・軍隊と社会
第四章 近世プロイセン常備軍における兵士の日常生活
――U・ブレーカーの『自伝』を中心に 阪口修平
はじめに
第一節 ブレーカーとその『自伝』について
ブレーカーについて 『自伝』とその受容 『自伝』の信憑性について
第二節 軍隊社会1――募兵の光景
志願の動機と仮契約 募兵の光景 募兵団の生活、従者としての生活
第三節 軍隊社会2――平時の軍隊社会
軍隊への編入と宣誓、契約 新兵の軍事教練 収入と衣・食・住 兵士の苦悩と気晴らし
第四節 軍隊社会3――七年戦争と脱走
行軍・宿泊・略奪 脱走
まとめと展望
第五章 第一次世界大戦下の板東俘虜収容所
――軍隊と「社会」 宮崎揚弘
はじめに
第一節 青島攻防戦と日本の勝利
俘虜の日本移送と収容所の開設
第二節 板東俘虜収容所における軍隊の勤務
収容所建設と全容 俘虜の到着と構成 俘虜の取扱い
第三節 収容所の生活、「社会」の諸相
日常生活とその経済的基盤 御用商人と商売 医療と健保組合 所内の流通とコミュニケーション手段 文化活動 芸術活動 スポーツ活動 その他の活動 面会、外出、郵便と日本の新聞 収容所「社会」の成果発表慰霊碑の建立
第四節 解放と帰国、軍隊の解体
他国他領域出身者の解放 ドイツ人俘虜の解放
おわりに
第六章 カントン制度再考
――一八世紀プロイセンにおける軍隊と社会 鈴木直志
はじめに
第一節 カントン制度と「社会の軍事化」論
第二節 制度の歴史的変遷
軍人王時代のカントン制度 フリードリヒ大王期以降の制度改変
第三節 制度運営の実際
農場領主と連隊将校の同一性 西部諸州におけるカントン制度 登録者・徴集兵・免除者の
割合 カントン制度に対する地域の対応
おわりに
第Ⅲ部 文化史からみた軍隊――プロパガンダ・啓蒙・記憶
第七章 初期近代ヨーロッパにおける正戦とプロパガンダ
――オーストリア継承戦争期におけるプロイセンとオーストリアを例に 屋敷二郎
はじめに
第一節 初期近代ヨーロッパの正戦とプロパガンダ
正当化の手段と根拠 プロパガンダと国民 正戦論の展開 「ヨーロッパ公法」
第二節 シュレージエン戦争と戦時プロパガンダ
第一次・第二次シュレージエン戦争 『反マキアヴェリ論』の正戦論とプロパガンダ 戦時プロパガンダが示唆するもの――プロイセン 戦時プロパガンダが示唆するもの――オース
トリア
まとめ
第八章 「セギュール規則」の検討
――アンシャン・レジームのフランス軍における改革と反動 竹村厚士
はじめに
第一節 「セギュール規則」を読む
誰が排除されたのか 法令の意図 例外事項
第二節 法を免れる者
第三節 アンシャン・レジームのメリトクラシー
「商業―軍事貴族」論争 「軍事貴族」創設 啓蒙の光 そして一本の糸
第四節 アンシャン・レジームの軍制改革と「セギュール規則」
よき人材の登用と富に対する戦い 陸軍大臣サン・ジェルマン 宮廷貴族対中小貴族 セギュールの登場 一七八一年五月二二日の規則
おわりに
第九章 アルマン・カレルの生涯(一八〇〇~一八三六)
――フランス革命‐ナポレオン戦争の歴史と記憶 西願広望
はじめに
第一節 敗戦の世代
第二節 剣の時代
サン・シル(St.Cyr)校 ベルフォール陰謀事件 スペイン
第三節 ペンの時代
七月革命前夜 七月革命直後の開戦論議 書くことは戦うこと
まとめ
あとがき 阪口修平もっと見る
著者紹介
※著者紹介は書籍刊行時のものです。[編著]阪口 修平(サカグチ シュウヘイ)
中央大学文学部教授。1943年大阪府生まれ。広島大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。主著:『プロイセン絶対王政の研究』(中央大学出版部、1988年)、『近代ヨーロッパの探求 軍隊』(共編著、ミネルヴァ書房、2009年)、『世界各国史 ドイツ史』(共著、山川出版社、2001年)、主訳書:U. ブレーカー著『スイス傭兵ブレーカーの自伝』(共訳、刀水書房、2000年)。もっと見る
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