ところで、この雑誌の経歴だが、幸運にも前述の別冊「明治百年」号の巻末に「年表・酒食明治百年」が4頁にわたって掲載されている。
これによれば、明治18年、横浜で法学士、磯野計が明治屋を創業。明治21年には明治屋が総発売元でキリンビールを発売。明治41年に早くも『嗜好』が創刊されている。大正9年、明治屋がコカ・コーラを初輸入(戦後、アメリカから輸入されたというのは俗説のようだ)。昭和13年頃から用紙制限の不安が起こり、15年、一時廃刊となる。しかし、戦後、昭和30年9月(通刊389号)に『嗜好』は復刊されている。奥付に編集人名は入っていないが、「編集後記」に毎号(山本)とのみ記入されている。大阪弁の後記が多いので、どうやら大阪出身の人らしい。ある号の後記の中に、発行部数は二万部、と出ている。
私は、昨今の不景気を考えると、このPR誌もとっくに休刊したかも、と思ったが、念のためと思い、東京中央区京橋にある明治屋本社広報部に電話して尋ねてみた。すると、驚いたことに、『嗜好』編集室につながり、ヴェテランらしい女性編集者が受け答えして下さったのである。
その現在の編集人、亀澤千恵子さんのお話によれば、『嗜好』は現在も続いており、何と、579号(2006年、6月号)に至っているという。これは各支店で、新号が出来た折、店頭で無料配布しているが、好評ですぐなくなってしまうらしい(岩波のPR誌『図書』に似ている)。関西では京都、神戸店はあるが、大阪店は撤退してしまった。定価も一応200円と付いているので、私は早速、最新号を一冊送ってもらうよう、注文した。その切手同封の注文の手紙に、当方もフリーの編集者であることや古本屋でたまたま『嗜好』の旧号を見つけたことなど添え書きしておいたら、御親切にも最近の号を三冊、送って下さった。今後、新号各に贈呈してくださる由で、まことに有難いはからいである。最近号を見てみると、むろん本文用紙や印刷などは格段によくなっているものの、判型や頁数、内容の構成などは以前と変っていない。 |