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38.モダニズムの画家、六條篤と、詩人、井上多喜三郎 |
『若い雲』表紙 (安土町立図書館蔵) | (追記) |
中でも、六條の珍しい句集『淡水魚』や多喜さんの大判の豪華限定版詩集(30部)『花粉』(昭16、青園荘)が見れたのは感激であった。雑誌も本もすべてが新刊のような美本ばかりで、よほど大切に保存されていたことが伺われる。 |
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私はまっ先に六條の随筆「余白」を探して読んだ。 多喜さんは第一次『月曜』のあるあとがきで、天野隆一の詩集『紫外線』の感想を述べ、天野氏が突然来訪し、おしゃべりしたが、彼の話題は難しすぎて・・・などと記している。また、以前連載で書いた藤村誠一(青一)が、菊地美和子の詩集『たそがれ地方』の書評とその著者について書いたのを見つけたのも発見であった。最後に、私が気に入って抜き書きした六條の作品から少しだけ紹介しておきたい。 |
「 冬 夜 風が 白い器を噛む 南へ 南へ 冬夜 一匹の蝶が迷い込んだ 壮大な内的宇宙を想わせるファンタジーではないか。 白き魚ピアノのキイを溯る こうして見てくると、六條がもし長生きしていたら、多喜さんにも劣らぬような、人々に愛される作品(むろん画集も)をもっと残したかもしれない、と思われる。 私はその後図書館前で、近くの能登川町に住む、元淡交社の編集者で、古本好きでもある山城孝之氏と落ちあい、氏の車でのどかな近在の外村繁記念文学館などを案内していただき、楽しい小旅行の一日となった。 |
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