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38.モダニズムの画家、六條篤と、詩人、井上多喜三郎 |
最後に、幸いにも巻末に収められている六條の貴重な「歌・詩・句抄」から、私の気に入った作品を少しばかり引用しておこう。
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最初の一首はいかにも本好きな青年像を彷彿させるし、二首目はまさに絵画「岬」を連想させるものだ。 |
『左手の漂影』表紙 |
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「らんぷの中の家族」1933年 (奈良県立美術館蔵) |
この三首目も、絵画「らんぷの中の家族」の歌化のごとくである。(あるいは歌→絵か?)このように、歌と絵画がぴったり呼応しあう芸術家も珍しい。 |
「三等郵便局 これは六條の職場を題材にしたものだが、メルヘンとファンタジーあふれる世界で、ユーモラスでもある。私はこの詩をもとに六條が絵本を作ってくれていたらステキなものになったのに、とも思った。
これらも、安西冬衛の有名な一行詩や三岸好太郎の絵と通底するものが感じられる。最後は余韻を残し、山頭火の世界にも近い。長い引用となったが、おそらく今後も六條の作品が紹介されることなどないと思うので、お許し願おう。 なお、中之島図書館で調べてもらったところ、六條の本は唯一、『左手の漂影』が同志社大学図書館にのみ、所蔵されているとのことである。 |
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