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37.大阪朝日会館長、十河巌の本と、前田藤四郎展と |
さらに、原田の森近くには、連載で紹介した、上筒井商店街の古本屋群もあった! |
その、まさに前田が見つけたという蔵書の二冊も展示されていたのだ。 |
ところで、なぜ今回、前田藤四郎展を続けて紹介するかというと、展示品を順次見て行った私は、前田氏もまた、朝日会館と関係のあった画家だと分ったからである。 |
前田氏は一時、装幀の仕事もしており、石野径一郎『南島経営』(昭17)、織田作之助『漂流』(昭17、輝文館)、宇井無愁『秋扇帖』(昭18、日進社)大仏次郎『陽炎の長吉』(昭23、大仏舎)が展示されていた。どれも初めて見る本だが、中でも織田作の本など、目録でも殆んど見かけない珍しいものである。 展示を見終り、私は前田氏の画業がこれを機会にもっと全国的に見直されてもいいのではないか、という思いを強くした。(これは、最近高島屋で初の回顧展が開かれた、大正の知られざるユニークな大阪の女性画家、島成園についても同様である。) |
最後に、私は本の再校中に、朝日会館から出ていた『デモス』昭和26年7月号を目録で、難波、ふるほんのオギノで、27年3月号を見つけることができた。表紙画はどちらも吉原治良。前者には青山光二の「映画と小説 ─ 『白痴』を見て」が入っており、後者には福田恒存「戯曲における日本的性格」などが見られる。前者はA5判、後者はB5判で、戦後すぐの文庫判大から二度も判型を変えているのが分った。これも本に書けなかったことなので、つけ加えておきたい。 |
「メリークリスマス大会」表紙 |
(追記) |
第二部、オペレッタ「ホテルタカラジェンヌ」は、作演出、高木四郎、美術が前述の十河巌となっている。中に竹中作詞の「明けゆく世界」の楽譜や第二部の七曲の主題歌の歌詞もザラ紙に印刷されたのが挟んであり、観客とともに合唱したものと思われる。私にも懐かしい「すみれの花咲く頃」も含まれていた。さぞ、楽しい催しだったにちがいない。 |
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