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3.大阪の百貨店(デパート)と出版文化 |
古本屋で見つけた『阪急美術』第八号を持っているが、執筆者に柳宗悦、浜田庄司が名を揃え、表紙は出雲手漉和紙を用い、鍋井克之が装釘するという雅趣に富んだ造りで ―― |
最近の新聞に大阪の松坂屋(天満橋他)が来年春には閉店されるという記事が出ていた。地理的にも不便なので、私はめったに出かけたことはないが、中にあるジュンク堂へは何度か足を運んだこともあり、残念だ。 古い雑誌やパンフ類が雑然と積まれた束の中に、背が大分痛んだB5判の薄い『趣味道場』という、初めて見る雑誌を見つけたので、奥付を見ると、何とこれが創刊号(昭和12年3月号)で、編輯所が「大阪松坂屋内松坂倶楽部」となっている。 荒木伊兵衛といえば、昭和初期、心斎橋に同名の店を開いていた古本屋主人。 改めて考えてみると、大阪の百貨店と出版文化のつながりは意外と深いように思われる。まず、梅田阪急が、昭和12年から16年まで『阪急美術』を出し、その後も『汎究美術』、『美術・工芸』と誌名を変えながらも続き、戦後は『日本美術工芸』として息長く発行されていたが、惜しいことに平成九年、通算七百号で休刊になっている。 |
さらにあまり知られていないのが、戦後の一時期活動していた、大丸出版社と高島屋出版部の存在であろう。 高島屋出版部からは小説が多く、芹沢光治良『眞実記』(昭22)、徳永直『がま』『追憶』(昭23)、船山馨『忘却の河』(昭23)、大下宇陀児『宇宙線の情熱』(昭24)、阿部知二『わかもの』などが出ている。同社の美術部の人脈からか、小磯良平、宮本三郎といった一流の画家が表紙を飾っている。 当時の経営者や幹部に文芸好き、出版好きの人がいたのだろうか。 |
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