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47.神戸の詩人同士の友情を読む ─ 林喜芳と板倉栄三の詩集 ─ |
収録されている詩そのものはおおむね素朴なもので、やや自嘲的、詠嘆的、教訓調のものが多い。これは長い臥床生活の中で衝動的に(?)生み出されたものなので、ムリもなかろう。ここでは一つだけ板倉氏らしい詩を紹介しておく。「ムダイ」と題するものだ。 |
ハリタオスコトダ |
奥付に、簡単な板倉氏の略歴が記されていて、「明治三十九年一月十一日生 兵庫県明石市ニ生ル/学歴 ナシ/職歴 種々転ジタレド、オオムネ売卜(ぼく)ヲ業トセリ/大正末年「戦線詩人」ヲ林ト、次イデ「裸人」昭和四年「魔貌」ヲ竹森・林ト刊ス」とある。板倉氏は、昭和54年、73歳でなくなっている。発行所は、林方「少年」発行所で、印刷所は大栄印刷(株)とあるから、林氏が勤めていた会社である! |
実は今回の原稿を書く際、以前の連載でも言及した、たかとう匡子さん(昨年度、小野十三郎賞受賞の詩人)の『地べたから視る』(編集工房ノア)─ 林喜芳の書誌的評伝 ─ を再び参照した。すると、そこでも「ある出会い ── 板倉栄三」というエッセイがちゃんとあるではないか!(それゆえ、結果的に多少叙述がダブったのはお許し願いたい。) |
本書の巻末には林氏の詳しい「年譜・書誌」が44頁にわたって載っている。それを見ると、晩年、『柵』や『少年』に書かれたエッセイで単行本未収録のものがまだかなりあるようだ。 |
最後に、私がグッとくるものがあった『林喜芳半個詩集』に収録されている、板倉氏を描いた詩の一つ、「老友生きる」(初出は『少年』60号)を引用させていただこう。カタカナ部分の詩は『歯抜けのそうめん』冒頭の板倉氏の詩「近況」からの引用である。 |
十年の余も臥ている彼が |
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