創元社の将棋の本

観る将のひとりごと

じつは大の将棋ファン!! 創元社社長による、将棋観戦が楽しくなるミニコラム。

【観る将のプロフィール】

数年前、初めて出た地元の将棋大会で幼稚園児の女の子に軽くあしらわれ、以来「観る将」専門に。唯一の得意戦法は中飛車。最近は藤井聡太七段に夢中。

2019.10.10

第60期王位戦、豊島二冠と木村一基九段の7番勝負は稀に見る激戦で最終局までもつれましたが、後手番の木村九段が勝利し新王位が誕生しました。木村九段にとっては、46歳にして初のタイトル獲得となります。
木村九段は悲運の棋士と呼ばれ続け、過去6度のタイトルに挑戦するも失敗。なかでも王位戦ではタイトル挑戦の機会が3度もありながら何れも敗退し、さらにそのうち2度は3勝4敗、特に10年前の第50期王位戦では3連勝の後の4連敗でした。
将棋は藤井聡太七段を例に出すまでもなく、若い人が圧倒的に有利です。引退した有吉九段の初タイトル獲得最年長記録が37歳だったことと比べても、木村九段の46歳という記録は将棋界の歴史に残ります。受け将棋が得意で、「千駄ヶ谷の受け師」とも呼ばれる苦労人の座右の銘が、標題の百折不撓です。百回折れてもくじけない。文字を見ただけで泣けてきますね。将棋解説では軽妙なしゃべりでファンも多いのですが、この日は記者に「家族への思いは?」と聞かれたとき、そっとメガネをはずして涙をぬぐいました。全木村ファンがもらい泣きしたと思います。50歳でB級2組に昇進した杉本八段とともに、中高年パワーをますます全開にしてがんばってください。

2019.09.10

最近メディアでよく取り上げられるようになった言葉が「ギフテッド(gifted)」。生まれながらにして、ある分野について特別な能力を発揮する人たちのことを指すようですが、将棋の世界はまさにギフテッドの集合体と言えるでしょう。集中力、あきらめない心、暗記力、論理力などが並外れている人間ばかりの中で、更にトップクラスで活躍する棋士たちは、単に努力しただけでは到達し得ない世界を見ているのだと思います。
ここ1、2年でそのギフテッドぶりを世間に見せつけているのは藤井聡太七段でしょう。桁外れのアイデア、推測力は、日々の戦いの中でも十分に発揮されていますが、小学生の時から優勝し続けている詰め将棋の世界では、すでに誰も追いつけないほどの高みへ上り詰めたようにも感じます。9月のはじめには、8歳の時に対戦して号泣させられた因縁の相手である谷川九段との対局で見事9年前の借りを返しました。ギフテッドの先輩後輩がしのぎを削る将棋という世界のすばらしさを、これからも十分に味わいたいと思います。

2019.08.13

対局室で勝負がおこなわれているまさにそのとき、注目度の高い棋戦では、多くのプロ棋士が別室で次の一手を巡りシミュレーションを積み重ねています。いろいろな意見を出しながら検討して、次の一手の候補を数手に絞り込むのです。対局中の棋士が打つ手も、その範囲で指されることがほとんどです。しかし時には、別室のプロ棋士たちの検討結果を遙かに超えた、想像もつかない一手が指されることもあります。過去の名対局と言われているものの中でも滅多に見られない、「歴史に残るような一手」です。
ここで最初にご紹介するのは、1988年NHK杯第4回戦第一局の加藤一二三九段VS羽生善治五段戦において、羽生五段が放った「▲5二銀」です。別室で解説をしていた米長永世棋聖が「おお~っ」と叫び、聞き手のNHKアナウンサー永井氏が「なんですか、これは」とびっくりした手です。「▲5二銀」という指し手だけで、多くの将棋愛好家はこの30年以上前の戦いを想起するほどです。
そしてもう一つご紹介したいのが、2018年6月15日の藤井聡太七段VS石田直裕五段戦で藤井七段が放った「△7七同飛車成り」という手です。これも解説者の間では見えなかった手で、対局相手の石田五段も全く想定していませんでした。詳細は省きますが、これもAIの予想すら超えた想定外の指し手でした。昨年の「升田幸三賞」を受賞したのも当然です。誰もが気がつかなかった一手。これこそ将棋を超えた、普遍的な革新の具体的な姿と言えるでしょう。

2019.07.10

将棋はおもしろいゲームですが、駒の意味、駒の形など意外に知られていないこともたくさんあります。今回は全部で8種類ある駒の意味について調べてみましょう。
「金」、「銀」はそれぞれに貴重な宝の名前。「桂」はニッキ(肉桂)という香味料、「香」は香木、「飛車」は馬車、「角」は牛車、「歩」は兵士の意味です。残りの一つは、一組の将棋駒の中でも更に違いがあります。それが「王」と「玉」です。「王」は王様の意味だとすぐわかりますが、「玉」にはどういう意味があるのでしょうか。
実は玉は宝物という意味なのです。実際対戦するとき、そんなの私はどっちでもいいよ、と言って使っている人も多いことでしょう。しかし公式の棋戦では王を上位者が使うと決まっています。なぜ上位者が王を使うのか。その理由については諸説あるようです。最古の駒は平安時代に興福寺の境内から発掘されたものですが、玉が三枚発掘され王はなかったことから、もともとは玉しか使われていなかったというのが定説です。しかしそれがどこかの時代から王も使われるようになった。はっきりしたことはわかりませんが、中国の礼記という古典に「天に二日無し、地に二王無し」、つまり天に二つの太陽が無いように、この世でも王は一人だけ、という一節があり、このことを知った豊臣秀吉が、二枚の玉のうち一枚を王に換えたという説があるそうです。
将棋というゲームは、もともと相手の王様を取るゲームではなく、宝物を取るゲームだったということを知っている人は、案外少ないのではないでしょうか。

2019.06.10

将棋界はまさに個性派揃い。名人や竜王、天才棋士などが脚光を浴びる一方で、また別の魅力から将棋の奥深さを楽しませてくれる棋士たちもいます。今回ご紹介したいのは都成竜馬五段です。藤井七段がデビューしてから最もたくさん対戦しているのがこの都成五段。藤井七段が29連勝したときに二つの白星を献上した棋士として有名になりました。今年5月28日の棋王戦組別予選決勝までは、藤井七段に5連敗。今回も厳しい戦いになると見られていましたが、事前に入念な準備をしてきた都成五段の執念が功を奏し、見事に勝利をつかみ取りました。
都成五段はそもそも名前が「竜」と「馬」。親御さんがどれほど将棋好きかということがわかりますね。実は都成五段は、小学5年生の時に親の期待に見事応えて小学生将棋名人戦で優勝し、宮崎県出身の天才少年として将来をおおいに嘱望されました。この大会は羽生九段や渡辺二冠も優勝している由緒ある大会です。そのあと谷川九段に入門、17歳で三段と順調に昇進。しかしここから成績は一進一退を続けることになり、苦難の道のりを歩む事になります。四段プロデビューは、資格喪失直前の26歳の時でした。棋風は自由で、居飛車も振り飛車もさします。藤井戦では負けが先行して成績も良くないと思われがちですが、他の棋士との対戦では力強さを発揮して藤井七段と同じC級1組に昇進し、前年度の成績では勝ち星数も勝率も180人居る棋士の中で12位にランクされる実力者です。
ところで、彼の実家は宮崎県にある白水舎乳業という乳製品を製造販売する会社で、奄美大島出身の曾祖父が宮崎で酪農を始めてから今年で創業100年を迎えたそうです。奄美大島ではイケメンのことを「きょらねせ」と呼びますが、マスコミでは棋士界の「きょらねせ」の代表として紹介され、観る将ファン拡大に一役かっているのは多くの人が知るところです。またこの5月から、TVの将棋番組として最も人気のあるNHK「将棋フォーカス」のMCを勤めることになりました。高見叡王、乃木坂46の向井葉月さんとの息もぴったりです。強いという物差しだけではない、いろいろな魅力を持つ都成竜馬五段の活躍を願っています。

2019.05.10

5月1日に時代は平成から令和へと替わりました。新天皇は初めてのあいさつ冒頭、「日本国憲法にのっとり……」という言葉を述べられましたが、この日本国憲法、草案は占領軍(GHQ)が書いたものです。連合国軍最高司令官マッカーサーがホイットニー准将に命じ、民政局の弁護士グループによって一週間余りで作られたことはよく知られています。
ところでこの占領下におけるGHQの民主化政策では、日本の伝統文化が好戦的、封建的であるということを理由に、剣道や柔道、歌舞伎などが次々と禁止させられました。そしてとうとう将棋もやり玉に挙げられます。
GHQ側から意見聴取の通達が将棋連盟にあり、1947年の夏、将棋界を代表して29歳の升田幸三(のちの名人)が派遣されました。ホイットニーから次々と厳しい質問を投げかけられる升田。そして最後に「将棋界最高峰の木村名人はしばしば軍部に通って将校相手に戦術を教えていた。こんな好戦的なゲームは禁止にして当然だ」という切り札を出されました。これに対し升田は「木村名人が指導したからあんたたちが勝ったんじゃないか。俺が指導していたらあんたたちは負けていた。木村名人はあんたらの恩人に当たるんだぞ」と一撃必殺の大逆転の演説をぶちます。升田はそれから5時間、しゃべり続け、最後に「将棋は取った駒を自分の駒として使う競技だ。巣鴨に入っている戦犯たちも、これを殺さずに役立ててほしい」と言い残して帰っていったといいます。将棋が禁止競技にならなかったのは升田のおかげなのです。
ホイットニーの度肝を抜いたこの男はその後、大山康晴とともに将棋界を盛り上げて1991年に亡くなりますが、今現在も「升田幸三賞」という賞が、その年で一番の新手に与えられるということは皆さんご存知の通り。占領軍を相手に一人戦った男の生きざまは、今も将棋界の中で語り継がれています。

2019.04.11

将棋の世界の一年は一般の学校と同じで4月1日に始まり3月31日に終わります。話題に事欠かなかった将棋界の2018年度も先月の31日で一区切りつきました。話題の中心にいる藤井聡太七段は2年目も立派な成績を収めました。中でも勝率首位(歴代3位/45勝8敗・0.849)という成績は、自分より上級の相手と戦うことが格段に増えた事から考えると、胸を張って良い記録です。
そしてファンにとっては、全ての棋士が一年を通じて指した全対局の中から選ばれる「新構想」「妙手」に送られる升田幸三賞の行方も気になるところですが、これも藤井七段が獲得。AI超えと言われる想定外の一手に、ファンだけではなく多くのプロ棋士も驚嘆しました。
最優秀棋士賞は豊島二冠が初の獲得、2019年度は佐藤名人への挑戦も決まっていて、最強棋士の名前に恥じない成績です。渡辺二冠の15連勝や広瀬竜王の活躍、四段棋士のレベルアップ、ベテランの復活、女流棋士の成長もめざましく、今年も将棋界から目が離せません。

2019.03.11

3月5日、多くのファンが待ち焦がれていた順位戦C級1組の最終局が行われました。注目は藤井聡太七段と師匠の杉本昌隆八段の師弟ダブル昇級が成るか?
天才少年の新たなドラマを期待するファンが、8勝1敗で横一線に並んだ4人の棋士(順位の上から近藤五段、杉本八段、船江六段、藤井七段)の対戦に注目しました。まず、師匠の杉本八段が千葉幸生七段を破りB級2組への昇級を先に決めました。これまで50歳以上の棋士が昇級したことは将棋の歴史上ほとんど例が無く、快挙といえるでしょう。続いて船江六段が勝利、この時点で藤井七段の昇級が消えたことになります。藤井七段はその後見事勝利をおさめましたが、結果として最後の最後で涙をのみました。結局、夜中の零時を超えてから激戦を制した近藤五段が、B級2組への最後の切符をつかみ六段に昇進したのです。
藤井七段を応援してきた多くのファンにとっては大変残念な結果となりましたが、筋書きのないドラマを十分に堪能できた事もまた事実です。来年度はぜひB級2組へ昇進してもらいたい、そう願っています。

2019.02.12

将棋界で今一番強いのは誰なのか。これが10年ほど前の問いなら、誰に聞いても答えは「羽生善治」となっていたでしょう。しかし今この問いを投げかけると、多様な答えが返ってくるはずです。豊島二冠なのか、佐藤名人なのか、広瀬竜王なのか、それとも藤井七段?
持っているタイトルがみんな違うし、同列に論じることも出来ません。しかし、そんな棋士たちの実力を計るための指標としてレーティングというやり方があります。これはチェス界の棋力判定方式を将棋界に導入したものです。仕組み自体は複雑なのでご紹介しませんが、比較的公平な見方が出来るようです。
2019年2月7日現在のレーティングトップは現在15連勝中の渡辺明棋王で1897点、以下広瀬竜王、豊島二冠と続き、4位に藤井七段が入ってきます。どうですか、この順位。なるほどね、とうなずきたくなりませんか。レーティングは毎日動きますので、これが絶対ではありませんが、将棋を見る方の楽しみとしては、このレーティングの順番が、野球の打率や打点のベストテンを見る時のような楽しみを与えてくれます。

2018.12.26

棋士の名前を表記するときは、名前の後に段位をつけることがルールとなっています。藤井聡太七段、佐藤康光九段など。これが女流の場合は香川愛生女流三段、塚田恵梨花女流一級となります。しかしタイトル保持者の場合は、佐藤名人、斎藤王座など名前の後にタイトル名が記されます。一人で複数タイトルを持った場合、例えば現在王位と棋聖の二つのタイトル保持者である豊島八段の場合は、豊島二冠というように表記します。将棋界で名前の後に段位ではなくてタイトル名が表記されるということはとても名誉なことです。しかもそれが複数タイトル保持者となると、歴代棋士の中でも特別な存在です。長年いくつものタイトルを保持してきた羽生竜王ですが、今月の竜王戦(読売新聞社主催)七番勝負で広瀬八段に3勝4敗で敗れ、連続タイトル保持100期連続を達成できず27年ぶりに無冠状態となりました。今後は「羽生九段」と表記されるようになります。このことはご本人にとっても、もちろん辛いことでしょうが、将棋ファンにとっては衝撃的なことで、羽生さんが何のタイトルも持っていないということを想像することが難しいのです。羽生七冠と呼ばれていたときなどは、羽生さん以外の全員が段位での表記だったのです。竜王位を失うこととなったこの2018年12月は、ずっとトップを走り続けてきた天才の時代の終わりと平成という時代の終わりが重なって見え、感慨もひとしおです。それにしても、羽生さんの成し遂げた連続99期タイトル保持、永世七冠という偉業を今後破る人が出てくることは考えにくく、歴史上いつまでも語り継がれる記録となりそうです。「羽生九段」という言葉が定着するには、まだしばらく時間がかかりそうですが、あらためて将棋という競技の過酷さと公平さ、その奥深さに感動を覚える節目の竜王戦となりました。

2018.11.22

11月20日(火)、久しぶりに藤井聡太七段の対局(C級1組順位戦)が行われました。相手はこれから先も終生のライバルとして戦うことが宿命づけられている増田六段。29連勝の新記録を樹立した時の対局者その人です。2回目の顔合わせとなった竜王戦決勝トーナメントでは増田六段が執念で勝ちきり、対戦成績は1勝1敗に。そして今日の対局です。C級1組順位戦全勝の藤井七段が六連勝をあげB級2組への昇進をその手に引き寄せるのか、先輩の増田六段が勝ち越すのか、注目の一戦でしたが、今回は藤井七段が危なげなく勝ちきりました。とにかく最終盤の切れ味がすごかった。両者とも持ち時間を大きく残したままでの終了となったのです。今年度の順位戦は、藤井七段の師匠である杉本七段も絶好調、C級1組で全勝を続け、持ち点が藤井七段より師匠の方が多いので、現在は師匠の方が昇級に一歩近い位置にいます。両者ともこの調子が続けば、師匠と弟子が同一の級から同時昇進という好事も現実味を帯びてきます。二人が一緒に祝福されている場面が見たいのは私だけではないでしょう。

2018.10.22

藤井聡太七段の第49期新人王戦優勝は、多くの人が予想していたとはいえ素晴らしい記録です。すでに高段者として活躍しているのでまるで当然のようにも思えますが、まだまだ16才、現役の高校一年生です。ビッグタイトルとは言えないものの、今まで森内九段が持っていた最年少記録を31年ぶりに更新したことはもっと賞賛されるべきことでしょう。決勝戦の相手である出口三段は、プロになる前の奨励会三段リーグ戦のライバルでした。二年前、勝った方がプロ(四段)になるという一局を藤井三段(当時)が制したというストーリが背景にあり、出口三段からすれば、決勝に出てくるまでに多くの上位者を倒して、とうとう七段になった藤井棋士にリベンジ、というわけだったのですが……。デビュー戦の加藤一二三九段との一局が歴代最年長者と最年少者の対局であったように、藤井七段の戦いには、単なる勝負を越えた物語性があり、そこが多くのファン、観る将をひきつけるのではないでしょうか。

2018.09.25

「棋士」という言葉の使い方は意外に難しい。江戸時代には将棋指し、碁打ちと別名称で呼ばれていましたが、現在では将棋、囲碁とも「棋士」という言葉を使います。しかし囲碁界においての「棋士」は男性も女性も区別しないのに対し、将棋界では「棋士」とは男性のことで、女性は「女流棋士」と言い分けます。これは将棋界、囲碁界の組織の成り立ちとも大いに関係があります。囲碁界では昔から男性、女性を区別せずに、一般の対局が行われてきました。女性棋士の高段者も多い。一方将棋界では長らく男性だけで対局が行われてきました。もちろん昨今問題になっている女性の制度的排斥問題、というわけではないのですが、奨励会に入って26歳までに四段に昇格した女性がいままでにいなかったのです。そのため結果として将棋のプロ棋士(この言い方も厳密ではありませんが)は男性だけという時代が最近まで続いていました。ようやく、「女流棋士」という制度ができて、女性のプロ棋士が誕生してはいるものの、基本的には男性棋士とは異なる制度で成り立っています。ただ、本年8月、藤井聡太七段と里見女流四冠が公式戦で対局するなど、垣根は少しずつ低くなってはきています。近い将来、正規ルートで女性棋士が誕生し、囲碁界と同じように、将棋の棋士とは男女の両方を含むことが当たり前になることを願っています。

2018.08.27

将棋のルールはたった一つしかありませんが、持ち時間の長短は、棋戦によって違います。一番長い名人戦はなんと9時間。これは二日がかりの対局となります。竜王戦、王座戦、王将戦も8時間で、これも二日がかり。短い方ではNHK杯の10分が有名ですが、最近ではもっと短い、持ち時間5分の棋戦も始まりました。どんな棋戦でも最終盤には一手1分以内とか30秒以内になって白熱します。一方、序盤はお互いが構想を練る時間帯なので、一手に数時間かける場合もあり、「観る将」レベルではその時間を待ち続けることが難しい。解説者の棋士や女流棋士のトークがうまければ待ち時間も楽しいのですが、やはりNHK杯のように持ち時間10分で、90分以内に終わるのが私のレベルではありがたい。逆に、これより短すぎると流れについていけなくなってしまう。将来的にはさらに持ち時間が短い棋戦が増えてくるでしょう。観戦者が「待つこと」に耐えられなくなるからです。果たしてそれが将棋界にとって良いことかどうかはわかりませんが。

2018.07.25

このところ敗戦が増えた藤井聡太七段。といっても今期になってから12勝3敗。勝率は8割。昨年は対局数、勝数、勝率、連勝のすべてのジャンルでぶっちぎりの一位だっただけに今年は少しおとなしい目の成績に見えます。しかしこれはしょうがない。対戦相手が強い棋士ばかりになり、さすがにタイトルの本戦ではまだ勝ち抜けません。ファンとしてはハラハラしながらタイトルホルダーになる日を待つしかありませんが、勝ち負けにかかわらず、今まで見たこともないような新手を指す藤井七段から目を離すことができません。

2018.04.10

4月2日(月)、2017年度に活躍した棋士の表彰が日本将棋会館で開催されました。羽生二冠の最優秀棋士賞を含め全部で17賞あるのですが、藤井聡太六段はこのうち7つの賞(最多勝利、勝率、連勝、最多対局、新人、特別、名局賞特別賞)を獲得、しかも各ジャンルの二位に大きな差をつけての快挙です。連勝記録に至っては29連勝、16連勝と1,2位を独占、これに小学校6年から制覇を続けている詰将棋選手権四連覇を合わせれば、中学生棋士・藤井聡太六段という存在の凄まじさが伝わってきます。4月からの高校生棋士・藤井聡太六段はどこまで我々を夢中にさせてくれるのでしょうか。楽しみな一年が始まります。

2018.02.16

昨年の某TV番組で、東大生196人に「現代の天才は誰か」というアンケートが行われ、イチローや尾田栄一郎を抑えて藤井四段(当時)が選ばれました。もはや将棋の世界を乗り越えて、現代日本のスーパースターということになるのでしょうか。国民栄誉賞をとった羽生永世七冠が10位までに入らなかったのは、東大生の世代と離れているというのも原因か。

2017.11.24

藤井四段が地元名古屋でひいきにしているラーメン屋「陣屋」。このお店の大盛りチャーシュー麺をお気に入りなのはよく知られていますが、藤井四段がこのお店で書いた、詰将棋の色紙も話題になっています。その詰将棋がなんと27手詰め。ラーメンを食べている間に解けた人はいるのでしょうか。

2017.08.18

藤井聡太四段(15)は、8月15日(火)、大阪・関西将棋会館で小林健二九段(60)と王位戦予選で対局し、120手で勝利しました。終戦記念日の対局について「平和な時代だからこそ将棋を楽しめるので、非常にありがたいことだと思います」と語りました。こういう言葉も藤井四段の魅力のひとつ。15才ではなかなか言えないひとことです。
今年度の成績は26勝3敗となり、対局数、勝ち数、勝率(8割9分7厘)、連勝数(年度またぎで29連勝)の全4部門でトップを独走。昨年12月のデビュー戦以来の通算成績は36勝3敗となりました。

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