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5.詩人の回想記が面白い! |
文体が独自で、臨場感あふれる筆致で各々の人物像が 生き生きと描かれていて、迫力満点である。とくに私が印象に残ったのが、詩人の顔を描写したところだ ――― |
私は詩にはとんと暗い人間で、近代日本の代表的な詩集さえ、ごくわずかしかまともに読んでいない。けれども詩人の書いたエッセイ集、とりわけ回想記には目のない方で、時々古本屋で見つけては喜んで読んでいる。(中でも出色なのは金子光晴の『どくろ杯』など一連の回想記だ。) 先日も、市内のある古本屋の均一本コーナーで、草野心平の『詩と詩人』(昭29、和光社)と河井醉茗の同題『詩と詩人』(昭18、駸々堂)を見つけ、ホクホク顔で買って帰った。表紙は汚れているものの、二冊とも専門店では結構な値が付いているからだ。(後者は恩地孝四郎装。) 草野心平の詩も私はわずかしか知らず、以前、彼の詩のアンソロジー『母岩・蛙・天』(昭28、筑摩書房)の「蛙」の詩群を愉快に読んだ程度である。ただ、随筆集『火の車』(昭26、創元社)はこれも古本で見つけて読み、面白かった記憶がある。 帰宅後、早速読み出したが、期待に違わぬ面白さで引き込まれてしまった。 文体が独自で、臨場感あふれる筆致で各々の人物像が生き生きと描かれていて、迫力満点である。とくに私が印象に残ったのが、詩人の顔を描写したところだ。 千家元麿についても「それは骨格そのものがすでに秀抜であり、高貴でさびしく、愛にあふれ、くすぶりながら清潔であった。」とその美しさを讃えている。 もっとも、一匹ごとに名前まで付けてその生態を数多く歌った蛙の場合は、その個体識別法は顔よりもどうやら「鳴き声」の方だったような気がする。「りーるるる りらりらりら」などなど・・・・。 |
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