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1.波屋書房のこと |
この夏、私は思いきって名古屋まで遠出し、コピーしてきた。それは、川端康成、長沖一、藤沢、武田、林熊王(秋田実)、小野勇ほか4名による、いずれも心のこもった、哀切きわまる文章である ――― |
昭和(戦前期)の文芸史に果たした創元社の役割と功績には大きなものがある。 そんな中で、難波の千日前に書店も構えていた波屋書房は比較的知られている方かもしれない(書店は今も健在だが、経営者は替わっている)。 |
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最近、小野勇の弟で、昭和の文学史上、逸することのできない文学雑誌 「作品」の編集人だった小野松二の生涯と仕事を追跡している畏友・林哲夫氏が書物雑誌『サン板(サンは舟へんに山)』誌の連載で、「作品」の前身誌「一九三〇」23号(昭和5年1月)の目次を紹介されたが、その中に何と、「宇崎祥二追悼」の特集が17頁にわたって組まれているのを見いだしたのである。 それは、川端康成、長沖一、藤沢、武田、林熊王(秋田実)、小野勇ほか4名による、いずれも心のこもった、哀切きわまる文章である。宇崎がジャーナリストとして優れた批評家だったこと、東京在の同人にしばしば催促のハガキを出して叱咤激励したこと、アナーキストたちに襲撃される事件の後、急に病気が重くなったこと、病床でよく俳句を作っていたことなどが書かれている。 |
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雑誌で小出版社主の追悼記が多頁にわたって載ることは稀であり、大阪出版史の貴重な資料の入手に私は喜んでいる。 |
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