福田清人というと、私には華やかな存在というより、多少地味ながら、息長く活躍したいぶし銀のような作家であり、多くの業績を遺した近代文学研究者でもある、というイメージを抱く。戦前、戦後しばらくは純文学作家として、その後亡くなるまではむしろ児童文学作家として中心的に活躍した人だが、私は児童文学の方は全く読んでいないので、よく分らない。それでも、文庫になった『若草』や『春の目玉』の評価が高いのは知っているが。今回は幅広い福田氏の作品のごく一側面を紹介するに留まることを予め断わっておこう。(いや、いつの連載でもそうだが。)
私が福田清人の小説に本格的に出会ったのは古本で見つけた『憧憬』(昭17、富士書房)という作品集以来である。この中の中篇「文学仲間」に、昭和11年に自身も青年作家叢書の一冊として出した『脱出』出版をめぐって、その版元である協和書店主も仮称で登場するので、それらを推理して紹介した一文を『古本が古本を呼ぶ』(青弓社)に収録したのだった。
その後、何かの情報で福田氏が東大国文科卒業後、昭和4年に第一書房に入社し、昭和6年末まで、単行本の校正や創刊された『セルパン』の編集長をしばらく勤めており、その頃の体験を描いた作品に「青春年鑑」があるというのを知った。それが収録されている小説集『青春年鑑』(昭12、インテリゲンチャ社)がぜひ読みたくなり、長い間探求していたが、珍書とみえて全く見つけられなかった。それでやむなく、図書館にコピーを頼んで入手しようとしたが、近辺の図書館になく、国会図書館や日本近代文学館などにも収蔵されていないとのこと。 |