メディアの変革期のまっただ中で多様な「読書」の形を提供する
みなさん、蔦屋重三郎、通称蔦重をご存じでしょうか。現在NHKの大河ドラマ「べらぼう」の主人公で、江戸時代中期に活躍した版元、つまり出版人です。江戸の遊里であった吉原のガイドブックを作って成功し、続いて黄表紙という絵が主体の滑稽本で人気を博し、さらには歌麿の美人画や写楽の役者絵でも一世を風靡します。蔦重が活躍した江戸時代の中頃は、景気も良く、寺子屋の普及により識字率も世界最高水準で、本の世界は繁栄を極めました。この頃は和紙に木版印刷というスタイルでの刊行でしたが、100年ほどたった明治の初めには出版革命が起こります。活版印刷の登場です。ここから本や雑誌や新聞は大量部数の刊行が始まり、メディアの有り様は大きく変わりました。それから150年、令和7年の今、出版業界は更に大きなメディア革命に直面しています。デジタル、ネットワーク革命です。紙の本、電子書籍、オーディオブック、YouTubeなどのデジタルコンテンツなど多様な形での情報発信ができるようになり、今後どのような形に進んでいくのかは誰にも予測がつかない状況下にあります。しかし、我々ができることは、読者が必要とするもの、楽しんでもらえるものを愚直に作り続け、提供していくことにあると考えています。どうぞこの先もご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。2025年1月1日
株式会社 創元社 代表取締役社長
矢部 敬一