セオドア・グレイは周期表への熱い思いを抱き、彼のコレクションはどんな博物館にもひけをとらない。独特のウィットと博識で、そしてなによりもまず見事な写真で、彼は元素のユニークな性質と用途を――身近なものから突飛なものまで――興味のつきない例をあげて教えてくれる。見て美しく読んで楽しいこの本は、単なる元素のガイドブックではない。この世界を作っている物質に対するあなたの見方を大きく変化させる、目から鱗の一冊である。 ―オリヴァー・サックス (神経医学者、『レナードの朝』、『妻を帽子とまちがえた男』、『タングステンおじさん』などの著者) |
この元素の本は、スタイルの点でも内容の点でも、元素をあつかった他のすべての本をかすませてしまう! 黒をバックに見事なセンスで配置された写真の素晴らしさ。そこに付された短い解説文の中で、著者・グレイは選び抜かれた言葉を操って元素の用途を描写し、歴史を掘り下げ、さらにはこの世界に鋭いコメントで切り込んでさえみせる。なんとも楽しい思いをさせてもらった。 ―ロアルド・ホフマン (化学者、1981年ノーベル化学賞受賞) |
元素収集の喜び
私が元素を集めはじめたのは2002年です。その頃は、ほとんどの元素をそろえるには30年くらいかかるかなと思っていました。予想に反して(これは主にネットオークションのeBayのおかげと、私のマニアックな性格のせいです)、2009年までに、所持可能なすべての元素を代表する2300点近くの品を集めることができました。所持可能というのは、物理学の法則と人間の法律が所持を許すという意味です。その多くが本書のページを飾っています(……)。
特に嬉しいのは、意外な場所で思いもよらない元素に出会えた時です。純粋なニオブ(41)を、純粋無垢な清らかさとは無縁のボディーピアスショップ(店を出た後で全身に消毒剤をかけたくなるような場所)で見つけられるなんて、いったいだれが思うでしょう。(……)
元素収集はそれほど人気のある趣味ではありません。元素の化合物である鉱物のコレクターや、ポリマー製のビーニーベイビーズのぬいぐるみ集めに熱を上げている人〔日本でいえばさしずめガンダムのプラモデルのコレクター〕や、ある種の金属(硬貨)ばかり追いかけている人に比べれば、われわれ元素オタクは少数派、稀少な存在です。理由のひとつは、かなりの化学の知識がないとコレクションを安全に保管することさえ難しいからです。ナトリウムを湿ったところに置くと、爆発しかねませんからね〔本書のナトリウムの項を参照してください〕。けれども、もしそれぞれの元素の性質を詳しく勉強する気があるのなら、元素収集はあなたにはかりしれない実りを与えてくれます。