最後に、有名な『エナジー』(エッソスタンダード石油発行)にも少し触れておこう。これは、現在は作家、エッセイストとして活躍している高田宏氏が若き日々、光文社の『少女』編集部を退社後、エッソ石油に入り、唯一人で『エナジー』を創刊、編集したもので、1964年4月から1974年12月まで季刊で計39冊+特別号1冊を出した。その詳しいいきさつや雑誌の内容は、高田氏の『編集者放浪記』(PHP文庫)にまとめられている。私も昔、元本であっという間に読了したが、印刷所や多くの著者との交流の有様や編集者としての喜怒哀楽が自伝的に生き生きと描かれていて、後進の者としても大いに勉強になった。というより、こんなにも雑誌造りに身も心も捧げて没頭する著者の姿勢に脱帽し、私には及びもつかないな、と嘆息したものだ。
この雑誌には、高田氏が京大文学部仏文出身の縁で、桑原武夫を総師とする京大人文科研の人々、今西錦司を大将とする野外派の人類学や動物学の人々が沢山執筆していた。(そういえば、『放送朝日』の執筆者ともかなりダブっていたようだ)。大判(A4判)のビジュアルな雑誌だが、いつ、どこで初めて手に入れたのか、どうも思い出せない。が、古本屋で見つけた可能性が大きい。高田氏によると、約一万部刷って知識人たちに無料配布していたという。毎号、特集主義で、私も「日本の美学」や「日本の人間関係」「リズムと文化」「遊びの役割」などの号を手に入れ、面白く読んだ覚えがある。これらを読んだのも創元社編集部入社後初期の頃で、今では一冊も手元にない。 |