以上、少ない事例だが、著者たちは各々書名にこだわり、苦心して付けていることが分かる。当然ながらすべての出版物にはタイトルがあり、その成立には著者と出版社(編集者)のタイトルをめぐる秘められた攻防もあるだろう。何といっても、書名のよしあし、魅力によって売行きに大きな影響が出るのだから、著者も編集者も熱心に、慎重に考えざるをえない。具体的な書名は忘れたが、著者が「あとがき」で、この書名は出版社のたっての要望をやむなく受け入れてこうなったが、本当はぜひ○○の題名にしたかった、と正直に告白しているのを読んだことがある。著者としては自分の考えた題名に執着があり未練が残り、せめて「あとがき」で書き遺しておきたかったのだと思われる。おそらくは出版界では当時まだ実績が少ない著者の方だったかと思う。
反対に、最近私が楽しく読了した出久根達郎氏の、古本好きには格好の情報が満載されたコラム集『本を旅する』(河出書房新社)のあとがきを見ると、その最後に本書も「西口徹さんが編集してくださった。書名も西口さんの発案である。内容を端的に言い現わしていて、著者は大満足のあげく、こんな長いあとがきを記してしまった。」と書いている。いろんなケースがあるものである。 |