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不確かな時代を共に生きていくために必要な「自ら考える力」「他者と対話する力」「遠い世界を想像する力」を養う多様な視点を提供する、10代から読める人文書シリーズ。
日常生活のあらゆる場面に、サイエンスはかくれている! 物理学/生物学/化学/解剖学の「キホン」を手描き風のイラスト&解説でサポートする入門書シリーズ(全4巻)。
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※2013年8月刊行『子どもの本100問100答』(一般財団法人大阪国際児童文学振興財団編)より抜粋
(2025.01.17更新)
もちろん、数多くの本が出版されています。それだけ身近なテーマなのですが、子どもにとっては大きな問題です。どの「離婚」対策のマニュアルを読んでも、「あなたが原因で離婚するのではないと、子どもにしっかり伝えなさい」と書いてあります。子どもは、自分がよい子でなかったからではないかと悩むというのです。親の離婚をテーマにした本は、物語のなかに自分と同じような体験をして悩んでいる子がいて、その子のこころのなかが描かれているので、共感をもって読むことができる大切なものなのです。親の離婚を描いた本がさかんに出始めたのは、アメリカの1970年代の作品を翻訳した『私はちいさな小説家』*1や『カレンの日記』*2あたりからで、子どもが親の離婚を徐々に受け入れる過程がていねいに物語化されています。その後、北欧、ドイツ、日本などでも、相次いで出版されるようになりました。
『カレンの日記』にもはっきりと書かれているのですが、兄は「だんだんなれていかなきゃならない」と多少冷静なのに対して、妹は「ねむってしまうのがこわいの」と不安で眠れなくなる様子が描写されています。
『ココ、きみのせいじゃない はなれてくらすことになるママとパパと子どものための絵本』*3や『パパはジョニーっていうんだ』*4などは、幼児でも理解できるでしょう。もう少し年長の子どもには、シリーズ「パパとママが別れたとき」*5などの絵本があります。小学校の中学年向きのもので、読者が納得いくような作品は数が少ないのですが、『耳のなかの小人』*6は、父親と母親の家を行ったり来たりさせられている少女が主人公です。
主人公が10歳前後から、親の不仲に悩み、離婚にいたる過程がていねいに語られている作品が出てきます。親がきちんと離婚を伝えていないのに怒って、真相を確かめに父親に会いに行く『バイバイ 11歳の旅立ち』*7や、両親が不仲になり、不安に揺れる姉弟の心理を描いた『屋根にのるレーナ』*8などです。ネット検索で、「親、離婚、子どもの本」で、ヒットする作品リストのなかから、その子の状況に合った作品を探すことができます。作品を手渡す前に、その子の状況にふさわしいものかどうかを検討してください。
親の再婚の問題は、子どもを複雑な気持ちにさせます。どうしても実際の父や母と比べるからです。『シロクマたちのダンス』*9は、母親の再婚によって変化する息子の心理が、『ぎょろ目のジェラルド』*10は、母親の再婚相手へ違和感をもつ娘の気持ちが、ていねいに描かれています。再婚相手に子どもがいるケースでは、さらに物語は複雑化せざるをえません。『しあわせのゆでたまご』*11は、母親が異なる3人姉弟が、父親と取り残されてしまいます。
こうした物語は、結局子どもがしっかり自立することで終わることになるのが気になるところですが、それ以外に書きようがないのも現実です。
親の離婚をめぐる本の効用は、子どもが直面している問題を、作り物の物語として、こころの距離をおいて読めるところにあると考えられます。同じような境遇にいる子どもと出会い、慰められたり、示唆を受けたりするからです。
また、離婚家庭をテーマとした作品は、親の離婚に直面していない読者にも普遍的なテーマといえます。子どもにとって家庭は、大切な心身の居場所なので、家庭にまつわるドラマを物語としてくわしく知るのは興味深い体験になるのです。親との関係の持ち方や日常の暮らしも異なっていることを発見し、自分の家庭をちがった目で見ることにつながります。
*注1.ノーマ・クライン作、阿部宏訳、篠崎書林、1976 *注2.ジュディ・ブルーム作、長田 敏子訳、偕成社、1977 *注3.ヴィッキー・ランスキー著、ジェーン・プリンス絵、中川雅子訳、 太郎次郎社エディタス、2004 *注4.ボー・R.ホルムベルイ作、エヴァ・エリクソン絵、ひしき あきらこ訳、BL 出版、2004 *注5.『パパどこにいるの?』『おうちがふたつ』『恐竜の離婚』、 明石書店、2006 *注6.クリスティーネ・ネストリンガー作、松沢あさか訳、さ・え・ら書房、 1996 *注7.岡沢ゆみ作、文溪堂、1997 *注8.ペーター・ヘルトリング作、上田真而子訳、 偕成社、1997 *注9.ウルフ・スタルク作、菱木晃子訳、偕成社、1996 *注10.アン・ファイ ン作、岡本浜江訳、講談社、1991 *注11.上条さなえ作、ポプラ社、1999
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