おすすめの新刊や話題の書籍を、教育・図書館関係者さまの推薦のことばとともにご紹介します。
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政治の必要性や主要な統治方法・制度、政治哲学から、今日における国際的課題まで、政治のありようを簡潔な解説と豊富なイラストで示した、これまでにないビジュアル図鑑。
子どもの本に関わる質問や疑問にQ&A形式でお答えします。内容は月替わりで更新いたします。
※2013年8月刊行『子どもの本100問100答』(一般財団法人大阪国際児童文学振興財団編)より抜粋
(2024.4.16更新)
元の版型を50~60センチほどのサイズに拡大した大型絵本*1が登場するのは、1994年の偕成社の『はらぺこあおむし』が最初です。1998年に福音館書店が、「こどものとも劇場」シリーズとして、『おおきなかぶ』*2や『ぐりとぐら』*3などを出版します。90年代はこの2社だけでしたが、「読み聞かせ」活動がさかんになる2000年代以降、各社の人気絵本を拡大した大型絵本がぞくぞく出版されるようになり、現在150冊ぐらいが出版されています。
大型絵本のサイズは、同じ比率での拡大ですが、造本は、厚紙をコーティングしたボードブック仕様で、見返しのない無線綴じになります。紙の質感が変わり、色がちがって見えることがあります*4。
おはなし会の絵本は、最後列まで絵がよく見えることが条件です。細かい部分が読みとれない絵本も不向きです。おはなし会が、図書館のおはなしの部屋ぐらいの規模であれば、「こどものともシリーズ」の絵本や『11ぴきのねこ』*5などのロングセラーに多いB5判ぐらいの大きさの絵本も十分楽しむことができます。ところが、おはなし会で長年読まれてきたこのサイズの絵本が、小さすぎるという理由で使われなくなっています。おはなし会がクラス単位、学年単位、時には講堂でのイベントとして開催されることが多くなってきたからです。広い場所で大人数で楽しむために、大きい版型のはっきりした絵が選ばれます。絵本のサイズは年々大きくなり、近年はA4判より大きいサイズが増えています。さらにぐっと大きい大型絵本は、大人数のおはなし会の需要に合わせてつくられているといえるでしょう。
大型絵本は特設の書架台に置き、読み手が添付のテキストを読み、別の人がページをめくるという方法がよくとられています。絵を見せ、文を読み、ページをめくるという1人が表現していた三つの要素を複数で表現します。素早くめくろうにも重いので、舞台の転換のようにゆっくりと開かれます。「こどものとも劇場」の名前のとおり、演劇的な展開に似てきます。
絵本を読んでいると、子どもたちが身体を小さく変身させて絵本のページのなかに飛びこんでくるような気がよくするのですが、大型絵本の場合は、目の前に現れる等身大の劇空間を楽しんでいるように感じます。同じ絵本でも楽しみ方の質が異なっているのではないでしょうか。
絵本の大きさが変わると味わいも変化します。『そらまめくんのベッド』*6の舞台は、野原の小さな豆たちの世界ですが、大型絵本の中の大きな「そらまめくん」は、なんだか豆のぬいぐるみのようです。『きょだいなきょだいな』*7では、100人のこどもと巨大なピアノや石けんが登場しますが、大型化でよりダイナミックさを感じます。大型化に適しているかどうかは作品によりますが、拡大することで、完成していた絵本の世界のバランスをくずすことも多いのです。元の絵本の魅力がそこなわれていないか、確かめて選びましょう。
絵本が大きさを理由に選ばれないのは、とても残念なことです。何千冊もの本から選ぶのと150冊ほどの大型絵本から選ぶのでは、豊かさがまるでちがいます。「大型で絵がはっきりしている」という理由を優先しなくてすむように、おはなし会の規模を変えていくことも必要ではないでしょうか。大きい絵本も小さい絵本も、その大きさならではの魅力があります。聞き手に合わせて、さまざまな大きさの絵本を楽しみましょう。
*注1.架空社は1992年から1994年にオリジナルの大型絵本を3冊出版。 *注2.佐藤忠良作、福音館書店、1966 *注3.中川李枝子作、大村百合子絵、福音館書店、 1967 *注4.ほるぷ出版は『ちびゴリラのちびちび』などを「大きな絵本」として出版。40セン チ弱とやや小さく、造本は元の本と同じである。 *注5.馬場のぼる作、こぐま社、1967 *注6.なかやみわ作、福音館書店、2001 *注7.長谷川摂子文、降矢なな絵、福音館書店、2001
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