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不確かな時代を共に生きていくために必要な「自ら考える力」「他者と対話する力」「遠い世界を想像する力」を養う多様な視点を提供する、10代から読める人文書シリーズ。
日常生活のあらゆる場面に、サイエンスはかくれている! 物理学/生物学/化学/解剖学の「キホン」を手描き風のイラスト&解説でサポートする入門書シリーズ(全4巻)。
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※2013年8月刊行『子どもの本100問100答』(一般財団法人大阪国際児童文学振興財団編)より抜粋
(2024.11.15更新)
「ぞうさん」は、まど・みちおの代表的な童謡です。1952年12月、團伊玖磨が曲をつけ、NHK ラジオで放送されて国民的童謡となりました。作品は、短くわかりやすい言葉のなかに、子どもがゾウの母子に共感し、それらを通して自らも母との関係を認識していく様子が表現されています。
「ぞうさん」のほかにも、「やぎさんゆうびん」や「おさるがふねをかきました」など、曲がつけられた有名な作品が多くあります。
僕のほっぺたを歩くてんとうむしから自分の存在をあらためて見つめる「二本足のノミ」、生きるもの同士が非常な緊張感をもって対峙する「イナゴ」、無機質なもののなかに生命や自己存在を見つけ出す「つけもののおもし」など、鋭く対象を見つめたみずみずしい詩も印象に残ります。
まど作品のもう一つの魅力に、無尽蔵ともいえる言葉遊びがあります。「きりんはきりん/きりっときりん/きりょうもきしょうも/きふうもきぶんも/きっぱりきまって/ぎりにもきりん/きっすいきりん」。日本語の特徴を活かした言葉遊びは、思わず口ずさみたくなる響き、リズムがあり、そのなかに「きりんとは何か」という存在への問いかけが読み取れます。
このように、まどの世界は、身近なできごとをシンプルな言葉で綴りながら、そこに普遍的な哲学を読み取ることができ、想像を宇宙にまで広げられるのが特徴です。『まど・みちお全詩集』(伊藤英治編、理論社、2001新訂版)で全作品を読むことができ、ほかにも『まど・みちお詩の本 まどさん100歳100詩集』(伊藤英治編、理論社、2010)など、数多くの詩集が出版されています。
言葉と意味は深くつながっていますが、それを一度切り離し、また破壊することによって、言葉そのものの意義を考えさせる作家に谷川俊太郎がいます。『ことばあそびうた』(福音館書店、1973)には「いるかいるか/いないかいるか/いないいないいるか/いつならいるか/よるならいるか/またきてみるか」(いるか)など、詩の楽しさが伝わってきます。『みみをすます』(福音館書店、1982)や『どきん』(理論社、1983)など、感覚が研ぎ澄まされていき、詩体験のすばらしさを味わえる詩集も見逃せません。
一方、阪田寛夫は子どもの内面や本音をユーモアを交えながら描いた詩を数多く書いています。「さっちゃん」「おなかのへるうた」は、まどの作品同様、曲がつけられて歌われ、親しまれています*1。『てんとうむし』(童話屋、1988)など、詩の世界が広がる詩集もおすすめです。「クラスかい/ぼくのしかいはごかいめで/にかいの教室四時にさんかい」(にわかにわか)は、まど・みちおとの共著『まどさんとさかたさんのことばあそび』(小峰書店、1992)に収録されている言葉遊び歌です。
日常のできごとを類まれな感性で詩にし、想像力を発揮した大正期の童謡作家に金子みすゞがいます。イワシの大漁でわく港とは裏腹に、海のなかでの弔いに思いを馳せる「大漁」は、弱きもの、小さきものに寄り添います。「子供が子雀つかまへた/その子のかあさん笑つてた/雀のかあさんそれみてた/お屋根で鳴かずにそれ見てた」と歌われる「雀のかあさん」にも通じますが、〈地球という一つの共同体のなかでの謙虚さ〉*2が感じられます。
名もなき存在に思いを寄せ、その生は決して無用ではなく、存在自体が尊いことを歌った「土」など、普段顧みられない存在に目を向け、権力を振りかざす者に揺さぶりをかけ続けたみすゞの詩はいまも新鮮です。
詩には、詩人の研ぎ澄まされた感性、対象を見つめる独自の視点、日本語特有のリズムや響きが盛り込まれています。詩を読むことは、散文とは異なるこうした世界の魅力を味わい親しむことで、日常を見る目の豊かさを養うことといえるでしょう。
*注1.伊藤英治編『阪田寛夫全詩集』理論社、2011 *注2.矢崎節夫「金子みすゞ」『金子みすゞ全集』別巻、JULA出版局、1984
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