創元社NEWS＊2023年8月号

先日、今年の4月にオープンした「大阪コリアタウン歴史資料館」に伺ってきました。
アトリエを改装して作られた資料館で、奥にはお洒落なカフェも併設。展示スペース自体は大きなわけではありませんが、大阪生野区を生きた在日コリアンの方々の歴史が生活者の目線で紹介されていて、しみじみと勉強になりました。
BTSブームなどで駅前は活況でしたが、資料館の受付をされていた方にお話を伺ったところ、地域では住民の高齢化が進んでいるとのこと。いくつかの朝鮮学校も、近年統合が進行しているようです。直近ではJR鶴橋駅前にある高坂書店さんが閉店されるというニュースもありましたが、いま見ている景色がこれからもあるわけではない。そんなことを感じる訪問となりました。
書き残せるものを書き残しつつ、仕事をしていければと思います。
それでは今月のメルマガをお送りいたします。（A）

>>大阪コリアタウン歴史資料館HPはこちら

◇編集者の裏×裏・・・イチオシの新刊を担当編集者の声とともにご紹介。
◇新刊＆近刊情報・・・絶賛発売中＆これから発売予定の新刊ラインナップ。
◇営業部だより・・・営業部員がお届けする、本が読まれる現場からの報告。
◇最近出た書評・・・新聞や雑誌に掲載された創元社書籍の書評情報。
◇セミナー情報・・・創元社が主催するセミナー・イベントのお知らせ。

╋ 編集者の裏×裏（ウラジジョウ）
イチオシの新刊を担当編集者の声とともにご紹介。

シリーズ「あいだで考える」　風をとおすレッスン　人と人のあいだ【8/8発売】
田中 真知 著　定価1,540円（税込）

中東やアフリカで長年過ごしてきた著者が、旅の経験や、古今東西の様々な文化や文学作品などの例をとおして、人と人との「あいだ」を見つめ、そこに風をとおし、互いに自由になれる関係を紡ぐための道を読者と共に考える。
>>詳細はこちら

担当編集者より

　著者の田中真知さんとの打ち合わせは、いつも楽しい。真知さんが旅の中で遭遇した驚くべき出来事や、古今東西の書物から得た知識や情報が、話題に応じて自在に飛び出してくる。自宅からのオンライン打ち合わせでは、旅のお供である「あひる」と「かっぱ」のぬいぐるみを見せてくれたり、頭の上に乗せると心身が整う「タコ」の置物（100円ショップで入手できる）や、足を温めるための円筒状になった炬燵など、身の回りの便利グッズを紹介してくれたりした。一度など、大学にいる真知さんとオンラインで打ち合わせしたときには、ノートパソコン片手に内蔵カメラで中庭を映して歩きながら実況中継してくれたこともあった。真知さんは、そのようにして相手の心を自然となごませる達人である。
　そして、そうした一つひとつの「雑談」が、思いもよらぬ形で私たちの生活や社会、人間関係などの本質を突いていて、驚かされることもしばしばであった。（たとえば、あひるとかっぱのぬいぐるみは、本書1章の「人称が変わると世界が変わる」話に通じている）。真知さんと話していると、自分自身が囚われていた様々な固定観念に気づかされて、心に風がとおり、少し自由になったような優しい気持ちになる。（ちなみに真知さんの講義は学生さんにも大人気で、2020年には第2回立教大学教育活動特別賞を受賞した。カバーに載せている顔写真は、講義の最終回に学生さんから贈られた花束を手に微笑んでいる真知さんである）。
＊
　本書のテーマは「人間関係」である。ただし、「こうすればコミュニケーションがうまくいく」といった具体的なノウハウが書いてあるわけではない。むしろ、相手が見ている世界はどこまでいっても決して分からないという前提に立ち、とかく競争、上下関係、支配－被支配、独占－搾取などに陥りがちな人間関係をどうすればフェアな関係に変えていけるのか、人と人とが互いにとって自由になれる関係をどのような形で取り結べるのかということを、ゆっくりと丁寧に、さまざまな角度から解きほぐしていく。そして、それは突き詰めると、自分自身との関係にも及んでくる。自分自身との関係に風をとおすために、自分が使っている言葉の意味内容を明確にして、再定義し、感情の奥にある欲求を見極め、しかるのちに、どのような行動を取るかを自分で決められるようにする必要がある。
　こういったことは、私たちが日々直面している人間関係の悩みに対して即効性はないかもしれない。でも私は、周りとの関係や進路に悩んでいた10代の頃にこの本を読みたかったと強く思うし、今の時代にこの本を通して、真知さんの言葉を若い読者に届けられることが心から嬉しい。きっと真知さんの言葉は、若い読者の心にゆっくりと根を張り、その後の人生をしなやかに逞しく生きる力に繋がっていくだろうと期待している。
＊
　さて、本書にはノウハウは書かれていないが、真知さんは最後に一つだけ具体的な「レッスン」を読者に紹介してくれた。その名も「天使をとおす」レッスン。ぜひ本書を最後までお読みいただき、実践してみてもらえたら嬉しい。
（AN）

╋ 新刊＆近刊情報
絶賛発売中＆これから発売予定の新刊ラインナップ。

子どもの心がどんどん軽くなる　家庭でできる"表現アートセラピー"【7/13発売】 吉田 エリ 著　定価1,760円（税込） これから学芸員をめざす人のために【7/13発売】 杉本 竜 著　定価1,870円（税込） スモールステップで学ぶ力動的な心理アセスメントワークブック　出会いからフィードバックまで【7/25発売】 乾 吉佑 監修 / 加藤 佑昌、森本 麻穂 編著　定価2,970円（税込） 身近なモノやサービスから学ぶ「情報」教室2　情報デザインとコミュニケーション【7/25発売】 土屋 誠司 編 / 松本 和幸 著　定価2,750円（税込） ETHレクチャー　第6巻　1938-1940　ヨーガと瞑想の心理学【8/8発売】 Ｃ・Ｇ・ユング 著 / M・リープシャー 編 / 河合 俊雄 監修 / 猪股 剛 ほか訳 定価5,720円（税込） 改訂新版　コーヒーと日本人の文化誌　世界最高のコーヒーが生まれる場所【8/18発売】 メリー・ホワイト 著 / 有泉 芙美代 訳　定価2,970円（税込）

図説 日本の城と城下町⑦　彦根城【7/13発売】 母利美和 監修　定価1,650円（税込） さよなら、子ども虐待【7/13発売】 細川 貂々、今 一生 著　定価1,650円（税込） 姫君の世界史　エリザベートと黄昏のハプスブルク帝国【7/25発売】 小宮 正安 著　定価2,640円（税込） 身近なモノやサービスから学ぶ「情報」教室3　コンピュータとプログラミング【7/25発売】 土屋 誠司 編 / 芋野 美紗子 著　定価2,750円（税込） 小さな子どもといっしょに楽しむマインドフルネス　すこやかな心を育てる30のアクティビティ【8/18発売】 ハイディ・フランス 著 / デニス・ホームズ イラスト / 芦谷 道子 訳　定価1,980円（税込） 「科学のキホン」シリーズ③　イラストでわかるやさしい化学【8/25発売】 アリ・O・セゼル 著 / 東辻 千枝子 訳　定価3,080円（税込）

ひとりで探せる川原や海辺のきれいな石の図鑑３　海辺篇【7/13発売】 柴山 元彦 著　定価1,650円（税込） 〈おたすけモンスター〉シリーズ9　きっと、友だちはできる　子どもが友人関係を築くためのガイド【7/25発売】 ポピー・オニール 著 / 山崎 正浩 訳　定価1,760円（税込） 上昇（アップスウィング）　アメリカは再び〈団結〉できるのか【7/25発売】 ロバート・Ｄ・パットナム、シェイリン・ロムニー・ギャレット 著 / 柴内 康文 訳 定価4,950円（税込） 50の傑作絵画で見る　神話の世界【8/8発売】 ジェラール・ドゥニゾ 著 / 遠藤 ゆかり 訳　定価4,950円（税込） 子どものためのおだやかマインドフルネス　感情の波をしずめて心がやすらぐ【8/18発売】 シャロン・セルビー 著 / アンナ・ハーリー イラスト / 芦谷 道子 訳　定価1,980円（税込） 身近なモノやサービスから学ぶ「情報」教室④　アルゴリズムとデータサイエンス【8/25発売】 土屋 誠司 編 / 鈴木 基之 著　定価2,750円（税込）

╋ 営業部便り
営業部員がお届けする、本が読まれる現場からの報告。

8/4（金）・５（土）の2日間にわたり、「創元ブックフェス」が開催されました。
自社としては、これまでで最も大規模なイベント運営となりました。
当日は近隣の書店さんにも出展いただき、ともにイベントを盛り上げていただきました。
地元の方々をはじめ遠方より来ていただいた方、同業の関係者、友人・知人など多数の来場者をお迎えすることができ、成功裡に終えることができました。
このイベントを目的にわざわざお越しいただき、直接ご意見・ご感想を頂戴できたことが、我々社員にとって今後の大きな糧になることは間違いありません。この場をお借りし、御礼申し上げます。
イベント関連の話が続きますが、関西の出版社による書店イベントが現在開催しており、弊社も参加しております。

●今年もやります！地元やからおもろいと思うで、知らんけど　関西の出版社合同フェア
⇒　https://store.kinokuniya.co.jp/event/20230725/

フェア期間中の数日ですが、弊社社員がイベントスペースで直接商品説明をおこなっています。
「創元ブックフェスに行きたかったけど、都合が合わずに行けなかった。」という方がいらっしゃいましたら、是非紀伊國屋書店梅田本店へお越しください。フェアは8/16（水）まで。
（K）

╋ 最近出た書評
新聞や雑誌に掲載された創元社書籍の書評情報。

・エリザベートと黄昏のハプスブルク帝国／美術展ナビ
>>書評はこちら

・『ゼクシィ』のメディア史／日本経済新聞
>>書評はこちら

・『ゼクシィ』のメディア史／朝日新聞
>>書評はこちら

・池崎忠孝の明暗／東洋経済ONLINE
>>書評はこちら

・SNSの哲学／ダ・ヴィンチweb
>>書評はこちら

・進化が同性愛を用意した／朝日新聞
>>書評はこちら

╋ セミナー情報
創元社が主催するセミナー・イベントのお知らせ。

【オンラインセミナー】
パーソン・センタード・セラピーの視点で学ぶ事例検討ワークショップ


【刊行記念オンラインイベント】
　エリザベートと姑ゾフィーはなぜ分かり合えなかったのか？


家庭でできる"表現アートセラピー"［全３回］
　

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