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創元社NEWS*2021年4月号
完全にうろ覚えですが、小説家の堀江敏幸さんの書いた文章の中に、お世話になった中国人のおじいさんと卓球試合をしたら、主人公も部活で鍛えたはずなのに手も足もでないほどにボロ負けした、というお話があったように思います(勘違いでしたらすみません)。
世界一の名手がいる、とかではなく、街中でふつうに出会う人のアベレージが一定して高い。
これをその地域が誇る「レベルの高い」文化なのだとしたら、私の地元・神戸の場合、それはたぶん「パン」だと思います。世界一おいしいパン屋さんがある!、とかではなく(もちろん名店はたくさんありますが)、どこに入ってもそこそこ満足できるくらいにはおいしい。そんな地元が大好きです。
私たちの本作りも、そうありたいと思います(強引!)。それでは今月のメルマガをお送りします。
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◇編集者の裏×裏・・・イチオシの新刊を担当編集者の声とともにご紹介。
◇新刊&近刊情報・・・絶賛発売中&これから発売予定の新刊ラインナップ。
◇営業部だより・・・営業部員がお届けする、本が読まれる現場からの報告。
◇キャンペーンのお知らせ・・・現在実施中のキャンペーン情報。
◇「じんぶん堂」掲載情報・・・「じんぶん堂」に掲載された弊社記事をお知らせ。 |
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╋ 編集者の裏×裏(ウラジジョウ)
イチオシの新刊を担当編集者の声とともにご紹介。
社会を変えた50人の女性アーティストたち【4/15発売】
レイチェル・イグノトフスキー著/野中モモ訳 定価1,980円(税込)
美術・彫刻・写真・陶芸・建築・デザインなど、ファインアートにとどまらぬ幅広い芸術ジャンルで才能を発揮し、常識にとらわれない自由な表現で社会をゆるがせた世界の50人の女性アーティストの活躍を、チャーミングなイラストとともに紹介する、レイチェル・イグノトフスキーのシリーズ第3弾。人種・階級・性差別にくじけず力強く創作し、人々の心をゆさぶったヒロインたちを、人間的な魅力を引き出しながら描き上げています。
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担当編集者より
習い事はほとんどしなかったが、物心ついた頃から絵を描くのが好きだったので、絵画教室だけは小学校入学から9年間続けた。その教室の先生は女性で、観察の大切さをくり返し教えてくれた一方で、上手に描けるようになることよりも、絵本をつくったり工作したり、私たちが空想や意欲をふくらませて自由にものを作ることを優先してくれた。
中学のとき担任を受け持ってもらったのも女性の美術の先生だった。チャキチャキした気持ちのいい性格で、授業でも行事でも、生徒の文化活動を熱心にサポートしてくれた。ただし、将来は美術大学に行きたいと私が言ったときには断固反対された。今から思えばそんな実力もなかったけれども、先生はハラスメント的にではなく至極冷静に、芸術の世界でやっていく大変さを教え、私の選択肢を増やす道を一緒に考えてくれた。
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その大変さは誰にとっても同じだと思っていた。好きなように絵を描き、ものをつくる権利があるのと同じように、それを続ける上でともなう困難も平等だと思っていた。しかし本当はそうではなかった。私はたまたま少しだけ運のいい環境に生まれ育って、そんな幻想をしばしの間持つことができただけだったのだ。その後、「若いから」「女だから」「アジア人だから」などのどうしようもない理由でナメられ、貶められ、害される経験をさんざんして、世の中ちっとも平等じゃないぞということがわかってきた。
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そもそも日本では、多くの人にとってアートは「何だかよくわからない」もので、アーティストの社会的地位がまだまだ低い。マジョリティにとっても厳しい世界だからこそ見過ごされがちだが、それはすなわちマイノリティ(単に少数者というだけでなく、社会的権力が弱い人たち)にとっては、困難どころかスタートラインにすら立てないかもしれないということなのだ。
アートは難しいものじゃない。誰にでも開かれ、形式も問わない。私たちのすぐ隣にあって、私たちが言葉にできないような考えや祈りや感情を現象化するもの。本書は、そのようなアートの垣根のない広がりを示すとともに、自由なはずの世界にすらも存在する不均衡を真正面から見据えた本なのである。本書に登場する女性アーティストたちは確かに不当な差別や理不尽な規範に抗って社会に影響を与えたが、本書を読めばその業績以上に、彼女たちの創作せずにはおれないひたむきさや芸術を楽しむ姿の方が強く印象に残ると思う。この純粋な熱意や楽しみを奪う権利が誰にあるというのだろう。
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いっぽうで『50人の女性』シリーズが出るたびに感じ、また自分に言い聞かせているのは、「50人のなかに名前のない女性たちをこそ見よ」ということである。本書に名を残す女性アーティストはみな素晴らしい。でも私にとっては、ここに挙がる高名な芸術家と同じくらい、絵画教室で創作の楽しさを教えてくれたS先生や、私の進路を親身になって考えてくれたD先生は、私の“社会”を変えた女性アーティストなのだ。たとえその名が大きな歴史には表れないとしても。
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╋ 新刊&近刊情報
絶賛発売中&これから発売予定の新刊ラインナップ。 |
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アルケミスト双書 闇の西洋絵画史〈1〉悪魔【3/17発売】
山田五郎著 定価1,650円(税込)
「アルケミスト双書」から『闇の西洋絵画史』篇が登場!第1巻は悪魔。「物事の本質は、闇の側面も見ることで、はじめて鮮やかな輪郭が浮かび上がってくるのです」山田五郎
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アルケミスト双書 闇の西洋絵画史〈2〉魔性【3/17発売】
山田五郎著 定価1,650円(税込)
「アルケミスト双書」から『闇の西洋絵画史』篇が登場!第2巻は魔性。「物事の本質は、闇の側面も見ることで、はじめて鮮やかな輪郭が浮かび上がってくるのです」山田五郎
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アルケミスト双書 闇の西洋絵画史〈3〉怪物【3/17発売】
山田五郎著 定価1,650円(税込)
「アルケミスト双書」から『闇の西洋絵画史』篇が登場!第3巻は怪物。「物事の本質は、闇の側面も見ることで、はじめて鮮やかな輪郭が浮かび上がってくるのです」山田五郎
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アルケミスト双書 闇の西洋絵画史〈4〉髑髏【3/17発売】
山田五郎著 定価1,650円(税込)
「アルケミスト双書」から『闇の西洋絵画史』篇が登場!第1巻は悪魔。「物事の本質は、闇の側面も見ることで、はじめて鮮やかな輪郭が浮かび上がってくるのです」山田五郎
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地球環境保全論 持続可能な社会をめざして【3/24発売】
和田武編著/小堀洋美著 定価3,080円(税込)
温暖化、生物多様の喪失、マイクロプラスチック汚染など、環境問題の解決は喫緊の課題である。何が問題で、どの程度深刻なのか。いま取り組むべき課題を明らかにする。
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アルケミスト双書 幻獣とモンスター 神話と幻想世界の動物たち【4/15発売】
タム・オマリー著/山崎正浩訳 定価1,320円(税込)
大好評の「プログラミング図鑑」を集めたセット。最新のScratch 3.0に対応したスクラッチ関連書3冊と、パイソン関連書2冊を専用ケースに収めました。
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新装版 トラウマの現実に向き合う ジャッジメントを手放すということ【4/15発売】
水島広子著 定価1,650円(税込)
トラウマ治療において重要なことは、患者を人間として評価しない、病気の専門家に徹する、という治療者の姿勢である。治療技法よりも治療者の姿勢に焦点を当てて解説する。
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アルケミスト双書 闇の西洋絵画史〈5〉横死【3/17発売】
山田五郎著 定価1,650円(税込)
「アルケミスト双書」から『闇の西洋絵画史』篇が登場!第5巻は横死。「物事の本質は、闇の側面も見ることで、はじめて鮮やかな輪郭が浮かび上がってくるのです」山田五郎
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箱庭療法の治癒へのプロセス 異質な自分との出会いとこころの揺らぎ【3/24発売】
不破早央里著 定価3,960円(税込)
箱庭制作をめぐる調査研究と臨床実践の乖離を埋めることを試み、連続した箱庭制作における主観的体験に焦点を当て、その力動・プロセスの検討から箱庭の治癒的要因を探る。
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ユング心理学研究 第13巻 コロナ危機とユング心理学【4/15発売】
日本ユング心理学会編 定価2,200円(税込)
ユング心理学者が国際保健学・感染症対策を専門とする山本太郎氏を迎えて行った座談会をはじめ、様々な角度から現在進行形のパンデミックに迫った論考を掲載する。
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世界でいちばん美しい こども元素ずかん【4/15発売】
セオドア・グレイ著/ニック・マン写真/若林文高監修/武井摩利訳 定価2,640円(税込)
科学が苦手なおとなたちをも夢中にさせた『世界で一番美しい元素図鑑』にキッズ版が登場。118元素を網羅した、楽しい科学エッセーと華麗な写真が融合した一冊。
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アルケミスト双書 闇の西洋絵画史第1期:5巻セット〈黒の闇〉篇【3/17発売】山田五郎著 定価1,650円(税込)
「アルケミスト双書」から『闇の西洋絵画史』篇が登場(カラー)。全10巻中、第1期5巻がセットに(美麗函)。テーマは「黒の闇」。内容:悪魔/魔性/怪物/髑髏/横死
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アルケミスト双書 フラクタル 混沌と秩序のあいだに生まれる美しい図形【4/1発売】O・リントン著/駒田曜訳 定価1,320円(税込)
フラクタルはどれだけズームしても果てしなく同じ形状が現れる不思議な図形。自然界から人間の血管パターンまで様々に出現。現代数学の最前線の一端をコンパクトに伝える。
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ユング派分析家資格取得論文シリーズ 第1巻 現代のトリックスターと心理療法【4/15発売】
田熊友紀子著 定価4,400円(税込)
神出鬼没、変幻自在なトリックスターは、現代の心理臨床の場でどのように機能するのか。多様なトリックスター像を整理し、自験例の検討を通じて、その再考/再興を試みる。
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╋ 営業部だより
営業部員がお届けする、本が読まれる現場からの報告。
営業部と一口に言っても色々な仕事がありまして、弊社所有の流通センター(倉庫)もやはり営業部の所属となります。
なかなか表に出ることのない出版社の倉庫内を少しばかり紹介したいと思います!
3階建てとなるこの建物、1階にはクラフト用紙につつまれた新本が出荷を今か今かと待ちながら、綺麗に整理されて配置されています。
2階は主に受注センターを兼ねた出荷作業フロアとなり、3階は、残念ながら戻ってきた返品書籍置き場になっています。
注文書を片手に広い庫内を走り回り(まだまだアナログ?)、ピッキングをし、出荷に向けて箱詰め作業へと続きます。
最近の弊社は図鑑や大きな本が多く正直重い。。。ですが、喜んでいただけるのなら「なんのその!」とばかりベテランスタッフが奮闘しております(笑)。
ご注文をいただき、みなさまにお届けする、実はとても身近な部署でもある創元社流通センターを今回紹介させていただきました!
今月の新刊【世界でいちばん美しいこども元素ずかん】や【社会を変えた50人の女性アーティスト】注目商品も準備万端!忙しくなりそうです!(CK) |
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╋ キャンペーンのお知らせ
現在実施中のキャンペーン情報。
【1】春の学び応援キャンペーン!!
『世界でいちばん美しい こども元素ずかん』または『社会を変えた50人の女性アーティストたち』をお買い上げの方に非売品特典等をプレゼント。
>>「春の学び応援キャンペーン!!」note記事 |
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╋ 「じんぶん堂」掲載情報
「じんぶん堂」に掲載された弊社記事をお知らせ。
■3.11からを生きるすべての人へ
絵本作家32人による『あの日からの或る日の絵とことば』
「あの日」――2011年3月11日――から、今年で10年となる。『あの日からの或る日の絵とことば』はヨシタケシンスケ氏、原マスミ氏、荒井良二氏など、それぞれの場所で東日本大震災を経験した32人の絵本作家が、当日の出来事を思い出すような或る日を、忘れられない不安や恐怖を、いまだに脳内にうずまく思考を、絵とことばで表したイラストブックだ。
>>「じんぶん堂」サイトで記事を読む
■自分の関心から読む、今と地続きのファシズム
『図説 モノから学ぶナチ・ドイツ事典』
「ファシズム」という言葉とともに知られるドイツ第三帝国は、先進的なワイマール民主主義のもとで生まれました。本書『図説 モノから学ぶナチ・ドイツ事典』は、そうしたドイツ・ファシズムの日常のなかから、暮らし・政治・軍事等を知るための特徴的なオブジェ100点を選び、どこからでも読める事典形式で編んだ、新しいヴィジュアル事典です。ラジオ、新聞、映画ポスター、ヒトラーの口ひげブラシから、子どものオモチャまで、日常のなかで触れる“モノ”の視点から、どこにでも起こりえる、今と地続きのファシズムを学ぶことができる一冊。
>>「じんぶん堂」サイトで記事を読む
■世にも奇妙な植物進化の結晶 『世界のふしぎな木の実図鑑』
世界中の木の実のユニークな造形美や性質を、美しい写真とともに紹介する『世界のふしぎな木の実図鑑』。刊行まもなく重版がかかった話題のビジュアルブックの制作秘話を担当編集者が語ります。
>>「じんぶん堂」サイトで記事を読む
■新しいアイデアを潰さない、個人を生かす柔軟な組織へ
――カーネギー『人を生かす組織』に学ぶ
今回は、部下やチームをマネジメントし成果につなげる方法を事細かに記した『人を生かす組織』(原題:MANAGING THROUGH PEOPLE)を取り上げる。アメリカで1975年に刊行された本書は、小社により日本でも刊行され読み継がれてきた。特に変化の激しいビジネスの世界で長きにわたり支持される理由は何なのか。
>>「じんぶん堂」サイトで記事を読む
■ケイソウの「微と美」に魅せられて
『驚異の珪藻世界 The Amazing World of Diatoms』
思わず「こ、これが生物!?」と言いたくなりませんか? ケイソウと言うと「珪藻土マット」くらいしか思い浮かばなかった私(編集者)ですが、その世界を知れば知るほど、見れば見るほど不思議の沼にハマっていきました。どの本もそうですが、出版の原点には「何かを伝えたい」という著者や編集者の想いがあると思います。今回はその原点を著者の一人、佐藤晋也・福井県立大学准教授に語っていただきました。
>>「じんぶん堂」サイトで記事を読む |
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