創元社NEWS*2021年1月号
あけましておめでとうございます。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
年賀状に代わりまして、弊社社長・矢部敬一の新年のご挨拶動画をお送りいたします。
毎年思ってもみないような変化が訪れる出版界ですが、新たな環境のなかでも読者の方々のもとめる本をお届けできるよう、チャレンジを続けられる一年になればと思います。本年も一層のご支援をなにとぞよろしくお願い申し上げます。

編集者の裏×裏・・・イチオシの新刊を担当編集者の声とともにご紹介。
新刊&近刊情報・・・絶賛発売中&これから発売予定の新刊ラインナップ。
営業部だより・・・営業部員がお届けする、本が読まれる現場からの報告。
[連載]ソジーのゲラ・・・公式キャラクター・ソジーが現在編集中の本のゲラを紹介。
将棋瓦版・・・創元社将棋普及チーム4名がお届けする、将棋に関するつぶやき。
キャンペーンのお知らせ・・・現在実施中のキャンペーン情報。
「じんぶん堂」掲載情報・・・「じんぶん堂」に掲載された弊社記事をお知らせ。

 編集者の裏×裏(ウラジジョウ)
イチオシの新刊を担当編集者の声とともにご紹介。

ぼく自身のノオト【1/12発売】
ヒュー・プレイサー著/きたやまおさむ訳 定価(本体1,600円+税)

青年の普遍的思索。500万部突破の世界的名著、待望の新装復刊。青年期の心を巡る、生き方を探し求める心理エッセイ。◆訳者新装版あとがき:きたやまおさむ◆推薦:山崎まどか(コラムニスト)「(前略)どのページのどの言葉も覚えている。久しぶりに手にとって、これはもしかして、いま必要とされている言葉ではないかと考える。北山修の名訳だ。」◆装画:中田いくみ(『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』)

担当編集者より
本書は新装復刻版です。その原本は、京都の人文書院さんが1979年に出版された翻訳書です。たまたまですが、私が生まれた年です。それから数十年後、古書店で本書を手にし、一読、復刊したいと思いました。複雑な権利関係があり、原出版社との交渉には数年を費やしました。
40年前の1979年といえば、日本が高度経済成長から安定成長をむかえ喧騒の渦巻く時期。本書の静的で内向的な思考と言葉は、感覚を先取りしすぎていたといっても過言ではなかったように思います。それが今、巣籠りを迫られ、自らの働き方や生き方を模索する機会も増え、まさに必要とされる時が来たように思います。
北山修先生が33歳の時に訳された(凄い……)、言葉の柔らかさ、芯の強さ、言葉に出して読む快感など、代え難い翻訳の魅力にも溢れています。ご高評賜れましたら幸いです。
最後に、少し長くなりますが、北山修先生による旧版時の訳者あとがき(一部抜粋)を掲載いたします。(YS)

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これは、一九七六年にBantam Booksから出版された‘Notes to Myself―My struggle to become a person’の日本語訳である。著者Hugh Pratherがこれを書いたのが一九七〇年で、そのとき彼は三十二歳、まったくの「無名」で、これといった「肩書き」もなかった。初版はアメリカ南西部のユタ州にある小さな出版社Real People Pressから大した広告もせずに発表され、数年の間に百万部を売りつくしている。内容は、小説でも詩集でもない。個人の日記の抜粋である。原文にはページ数の印刷がなく、どこから読んでもかまわないようになっており、もちろん目次もない。数年前まで学校のカウンセラーをやっていたというこの書き手は哲学者でも文学者でもなく、「みんなと同じ平凡な人間」である。
彼はいっさいの虚偽を許容できないらしい。彼は内的な現実をできる限り受けいれて、自らの内部にある真実を読者に伝えようとする。日本語を利用するなら、タテマエを拒否して、ホンネをできる限り表現することで、「ぼく」を確立する方法をさがし求めている。ゆえに、創作性のないこの本を文学性や思想性によって価値づけを行う必要はないし、実際にそんなことは不可能だろう。発想や行動の基盤をつねに「ぼく」に置いて、その「ぼく」の一部や全部が「ぼく」から遊離していくこと、さらに異物が「ぼく」のなかに入りこんで「ぼく」をしばりつけること、を罪悪視するのなら、実に日記という表現形式がもっともふさわしいものだったのである。私たちはホンネを言うことを自らを被害者化することと同じであると考え、「めめしい」と言ってそんな「ぼく」を切りすてようとする。しかし、著者のホンネは、決して弱音を吐くことではなく、自らの弱音をも自らのものとして語って相手と交流しようとする態度は一種の強さでもある。

╋ 新刊&近刊情報
絶賛発売中&これから発売予定の新刊ラインナップ。

不思議で奇麗な石の本<3冊セット>【12/8発売】
山田英春著 定価(本体5,400円+税)

模様石を3分冊にして編集した函入りセット。内容は『風景の石 パエジナ』『花束の石 プルーム・アゲート』『縞と色彩の石 アゲート』の3冊。プレゼントにも最適です。

縞と色彩の石 アゲート【12/8発売】
山田英春著 定価(本体1,800円+税)

<不思議で奇麗な石の本>の既刊「風景の石パエジナ」「花束の石プルーム・アゲート」に次いでラストを飾るのは無限の模様と色彩を持つアゲートの名品の数々。

空気が読めなくても それでいい。 非定型発達のトリセツ【12/8発売】
細川貂々、水島広子著 定価(本体1,200円+税)

日常様々な生き辛さを抱える「非定型発達」。その特質を対人関係療法の第一人者で精神科医の水島広子が、数多の臨床経験から解説するコミックエッセイ。シリーズ10万部。

驚異の珪藻世界 The Amazing World of Diatoms【12/15発売】
出井雅彦著/佐藤晋也著/デイヴィッド・マン著 定価(本体4,500円+税)

地球上で最も繁栄している植物プランクトンとして知られる〈ケイソウ〉。その「微」と「美」の世界に迫る、かつてないビジュアルブック。【日本語/英語併記】


対人関係精神分析を学ぶ――関わるところに生まれるこころ【12/15発売】
一丸藤太郎著 定価(本体3,200円+税)

サリヴァン、トンプソン、フロム、フロム=ライヒマンによって創始された精神分析の一つ、対人関係精神分析について、人間味あふれる筆致で魅力的に綴った心理臨床の一冊。

セラピストの主体性とコミットメント――心理臨床の基底部で動くもの【12/15発売】
山王教育研究所編 定価(本体3,400円+税)

自分を懸けてクライエントと真摯に向き合う、生きた存在としてのセラピストのあり方を切り口に、多様な事例に即して心理臨床の基底部で動く真に治療的な現象の本質を探る。

セールス・アドバンテージ 文庫版――カーネギーの販売原則【12/18発売】
D・カーネギー協会編/J・オリバー・クロムほか著/山本望訳 定価(本体1,200円+税)

単なるセールス技術の取得でなく、顧客との関係構築を主眼に置く、カーネギーの実践的販売原則。「売るための論理的プロセス」を採り入れ、自分なりのスタイルを築くために。

自己を伸ばす 文庫版――カーネギー・トレーニング【12/18発売】
アーサー・ペル著/香山晶訳 定価(本体900円+税)

カーネギー・コースの白熱したトレーニング風景を描くことで、読者を実践に導く。デール・カーネギーの半生記もつづられ、主著『人を動かす』等のエッセンスも要約され有用。

鉄道の基礎知識[増補改訂版]【12/25発売】
所澤秀樹著 定価(本体2,800円+税)

車両、列車、ダイヤ、駅、きっぷ、乗務員、運転のしかた、信号・標識の読み方など、鉄道に関するあらゆるテーマを蘊蓄たっぷりに解説した鉄道基本図書の決定版!

ユタの境界を生きる人々――現代沖縄のシャーマニズムを再考する【12/25発売】
平井芽阿里著 定価(本体3,400円+税)

現代沖縄の「ユタ」と称される霊的職能者に改めて着目し、従来の概念では説明のできない「ユタの境界を生きる人々」を対象に、現実に生きられている日常的実践を捉え直す。


深遠なる「幾何学」の世界【1/12発売】
マイク・ゴールドスミス著/緑慎也訳 定価(本体2,400円+税)

はるか2000年以上前のギリシャの学生からユークリッド、アルキメデスやアインシュタイン、そして現代の人々を魅了してきた深遠なる幾何学の世界に誘います。

ひと目でわかる プログラミングのしくみとはたらき図鑑【1/15発売】
渡邉昌宏監修/山崎正浩訳 定価(本体3,600円+税)

Scratch、Python、Web(HTML、JavaScript)の3タイプの言語を取り上げ、基本知識から簡単なプログラムを作成するところまで詳しく解説。

人を生かす組織 文庫版 カーネギーの経営原則【1/22発売】
D・カーネギー協会編/原一男訳 定価(本体1,200円+税)

カーネギー・マネジメント・セミナーをもとにした、普遍の組織管理論。豊富に盛り込まれた具体的な事例やエピソードは、人を尊重し生かすという基本哲学で貫かれている。

農の原理の史的研究 「農学栄えて農業亡ぶ」再考【1/22発売】
藤原辰史著 定価(本体3,500円+税)

工学に従属しない「農学」はどのようにして存在可能なのか。我が国の代表的農学者である横井時敬を軸に、農に関わる思想と実践を詳述。未来の農学を目指す、本格史的試論。

新型コロナがやってきた ウイルスに負けない「巣ごもり生活」【1/22発売】
ポール・ド・リヴロン、マルグリット・ド・リヴロン著/遠藤ゆかり訳 定価(本体2,200円+税)

新型コロナの感染が広がったフランスでの「巣ごもり生活」について、わかりやすい文章とかわいいイラストで説明。新型コロナに対する知識と日常生活の工夫を学ぶのに最適な一冊。


╋ 営業部だより
営業部員がお届けする、本が読まれる現場からの報告。
新型の疫病に日々悩まされながらの生活を強いられ、早や一年の時が過ぎようとしています。
世界各所でのロックダウン、景気後退、失業問題。
日本でも緊急事態宣言や飲食業への時短営業要請がなされ、さまざまな業界に大きな影響が及んでいます。

世界的な人口爆発、大気汚染、温室効果ガスの過剰排出やフードロス。
個人的には、世界がこれらの諸問題に真剣に取り組んでこなかったことに対し自然界から警鐘を鳴らされているようにも感じます。
「早く元の生活に戻りたい。」という声が処々方々で聞かれますが、最優先すべき課題はもしかすると経済だけではないのかもしれません。

そうした中、昨年は自宅で過ごすことが増え、その時間の一部を読書に充てる方が増加したようです。私は年末年始のステイホーム時間を使って読書をしようと、久しぶりに実家近くにある書店に足を伸ばしました。ここ数年、立ち寄ることがなかったそのお店は変わらぬ佇まいで私を出迎えてくれました。

小学校~高校時代にはコミックスや雑誌、学習参考書、就職を考え始めた大学生の頃、小社の「D.カーネギー」の書籍に出会ったのもこの書店でした。
ブックカバーを見ると、その時々のことが鮮やかに思い出されます。
当時と比べると、周辺の風景は大きく変わりましたが、100余年の歴史があるその書店は、静かに威厳を保っていたのでした。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。(SK)

[連載]ソジーのゲラ
公式キャラクター・ソジーが現在編集中の本のゲラを紹介。
「ソジー、今度は何の本のゲラを見つけたの?」 
う~~~ん。英語を勉強しなくてよくなって10うん年…。やっぱり、何度見ても納得
いかないなあ…。
なんで英語の複数形は
ヤギは goat"s" なのに
ヒツジは sheep のままなわけ!? 山がつくか、つかないかの違いなのに~! 
ちょっと見てソジー、2月の新刊『 ライオンのプライド 探偵になるクマ』のゲラ。
これは英語を勉強していくと誰もがぶちあたる「集合名詞」を学べる絵本なの。
集合名詞っていうのは、集団や数えられないものなどを表す名詞のことなんだけど、何でこれはsつかないの? っていうのも多くて、覚えるしかないんだよね。
しかも、それぞれの「群れ」を表すときに組み合わせられる単語も違うんだ。
たとえばヤギの群れは「トライブtribe」だけど、ヒツジの場合は「ドローヴdrove」。
鳥の群れは「フロックflock」だけど、同じ鳥なのにカラスは「マーダーmurder」、ヒバリは「エグザルティションexaltation」を使うんだって!
納得できるかぁ~!!?(心のギアッチョが暴れてしまうわ…。)
でもこの説明のつかなさが外国語学習のおもしろいところでもあるんだけどね。
ところで、ソジーにも実は仲間がいっぱいいるっていってたけど、ソジーの「群れ」は何だろう?(O)


╋ 将棋瓦版
将棋が好きな男性社員二名と将棋に興味が出てきた女性社員二名がお届けする将棋に関するつぶやき。
「将棋聖地探訪記 聖地巡礼編3」
―前回までのあらすじ―
創元社将棋普及チームで関西将棋会館へ訪問。メンバーでまわし読みをした『聖の青春(大崎善生著)』のゆかりの地が近くにあるということで引き続き聖地巡礼へ。
※昨年の10月に感染症対策を行い訪問した。

まずは上福島北公園へ向かう。美しい木立の向こうにシンフォニーホールが見えてくる。
A「上福島北公園に着きましたね。」
『われわれと青年は公園のほぼ中央で出会った(聖の青春 より)』
B「ここは『聖の青春』の著者大崎善生さんが村山聖さんと初めて会った場所ですよね。」
C「この場所が出てきました。」
D「ジョギングしている人が多いですね。」

A「次は浦江公園へ行ってみましょう。」
上福島北公園とは目と鼻の先ほど。上福島北公園より大きく、公園名の浦江は古来より残る旧地名である。桜の木が多く、春には桜が咲き乱れるようだ。
B「浦江公園は村山さんが住んでいたアパートの正面ですよね。」
C「映画の中での冒頭の桜のシーンは印象的でした。」

公園内で写真を撮るメンバー。楽しそうに遊んでいる小学生や近所の人が佇んでいた。村山聖さんもこの風景を見ていたのだろう。元気に駆け回る子どもたちを見てどんなことを考えていたのだろうか。

A「村山さんが住んでいた前田アパートを見に行ってみますか。」
B・C・D「行ってみましょう!」

次号に続く

―村山聖(むらやま・さとし)―
1969年生まれ、森信雄七段門下。広島県府中町出身。「羽生世代」と呼ばれる棋士の一人。5歳のとき、腎臓の難病ネフローゼ症候群を発症。病気と闘いながら17歳でプロ入り。順調に昇級していったが、1998年、順位戦A級在籍のまま29歳の若さで死去。

╋ キャンペーンのお知らせ
現在実施中のキャンペーン情報。
【1】お年玉キャンペーン
創元社ホームページにて書籍をお買い上げいただいたお客様に、購入金額に応じて「お年玉」をプレゼントいたします。
■実施期間:12月22日(火)~1月17日(日)

【2】『心理学手帳』愛読者アンケート
『心理学手帳』を購入しアンケートにご協力いただいた方の中から抽選で30名の方にオリジナルクリアファイルをプレゼント。

╋ 「じんぶん堂」掲載情報
「じんぶん堂」に掲載された弊社記事をお知らせ。
江戸時代の和本を読み解く至福のひととき 『図典「摂津名所図会」を読む』
江戸時代の和本に親しむには、「名所図会」シリーズは好適な素材の一つであろう。描かれているのが、現代にもつながる地名であったり、寺社や行楽地、祭りや風俗であるから、当地に興味ある人なら誰でも垣根なく親近感が持てる。何より豊富に掲載された絵図を眺めるだけでも、想像力が呼び起こされ、絵に描かれたディテールはどういう意味だろうとさらに知的好奇心が湧く。『図典「摂津名所図会」を読む』の著者である、作家・本渡章氏のツボを心得た絵解きと達意の文で、江戸時代の大阪へ紙上の時間旅行に案内する。

■無限の模様と色彩を持つ、悠久の時が生んだ自然のアート 『縞と色彩の石 アゲート』
2012年に小社から刊行した『不思議で美しい石の図鑑』。同書では、古代より世界中で愛好されてきた瑪瑙(めのう、アゲート)を中心に、石の中に隠されていた、自然のものとは思えない景色・風景・植物・生物・静物などを紹介し、鉱物本の世界に新たな風を吹き込みました。それから8年、人気の高い種目の模様石をクローズアップし、新たな名品を中心にして編んだのが<不思議で奇麗な石の本>、全3巻です。『風景の石パエジナ』、『花束の石プルーム・アゲート』に次いで、最後の3冊目の本書では、無限の模様と色彩を持つ、悠久の時が生んだ自然のアート縞瑪瑙(しまめのう)がテーマ。以下、本書の「はじめに」から抜粋して紹介します。

■東千茅×吉村萬壱「極悪対談 生前堆肥になろう」『人類堆肥化計画』刊行記念
創元社より自身初となる単著『人類堆肥化計画』を上梓した、東千茅さん。本書は、生きることの迫真性を求めて大阪の都市から奈良の里山に移り住んだ著者が、養鶏や稲作など自給自足の生活をベースとして、既存の里山観や倫理観に鋭く切り込む思想的エッセイになっています。去る11月1日、本書へ推薦の言葉を寄せていただいた小説家の吉村萬壱さんとの刊行記念対談を行ないました。本記事では対談の冒頭部分をご紹介します。

■植物たちの声なきSOSを聞く 『知っておきたい日本の絶滅危惧植物図鑑』
絶滅危惧植物の保全拠点園の一つとして知られる京都府立植物園の長澤淳一・元園長が約30年にわたって撮りためた写真を一挙掲載。花のアップから自生地の様子までわかります。また、それぞれの種の生態解説や危険度ランクをはじめ、レッドリストや種の保存法、生物多様性を守る意義など、絶滅危惧植物に関する基本的な知識もカバー。実際の保全活動の方法や事例も紹介する恰好の案内書です。著者の長澤さんに本書の内容や出版の経緯についてご寄稿いただきました。

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